大酒や毎日の酒は筋を破壊する

少量のアルコールならともかく、大酒や毎日の飲酒は筋肉にとってよくないらしいです。

酒を飲むと患部が充血し、ケガの回復が遅れる

サッカー選手の長谷部誠氏は、『心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣』(幻冬舎)の中で、以下のように書いています(p. 173)。


僕はふとある“相関関係”に気づいた。まわりの選手を見ていると、夜遊びをして、たくさんお酒を飲んでいる選手ほど筋肉系のケガをする確率が高かったのだ。
もちろんこれは僕の主観で、データ的な裏づけもないし、もしかしたら関係がないかもしれない。だが、のちにアスレチックトレーナーの方に聞いたところ、お酒を飲むと患部が充血して、ケガの回復が遅れるそうだ。古傷の状態が悪化することもあるという。

「急性アルコール筋症(ミオパチー)」と「慢性アルコール筋症」

酒は患部の充血の他にも問題を引き起こします。「急性アルコール筋症(ミオパチー)」と、「慢性アルコール筋症」です。これがなんか、意外とカジュアルに起こるっぽい。以下、『究極のトレーニング 最新スポーツ生理学と効率的カラダづくり』(石井直方、講談社)のpp. 246-247から要約。

「急性アルコール筋症(ミオパチー)」について
  • 大量飲酒は即座に筋を破壊する。これを「急性アルコール筋症(ミオパチー)」と呼ぶ
    • これにより以下の現象が起こる
      • 筋力低下
      • 筋痛
      • 血中へのミオグロビンの溶出
      • 筋繊維(特に速筋繊維)の部分的壊死
      • 筋のタンパク合成の低下(超回復が期待できない)

大酒を飲んだ後に著しく筋力が落ちるのは、これが原因らしいです。実は随意筋のみならず心筋でも同じ現象が起こるとされているとのこと。「二日酔いだから」力が入らないのだと思ってたら、実は筋肉が壊死したり心筋が弱ってたりする、なんてことも考えられるわけでしょうか。怖すぎる。

「慢性アルコール筋症」について
  • 酒を長期にわたって常飲すると筋力低下と筋の萎縮が起こる。これは「慢性アルコール筋症」と呼ぶことができる
    • 主要因は成長ホルモンやインスリン様成長因子-1(IFG-1)の分泌低下と考えられる
    • 筋力の低下は、それまでの総アルコール摂取量に比例する

アルコール依存症患者が痩せて筋肉も衰えているのは、単純に連続飲酒で食事が取れないせいだと思い込んでましたが、実はこういう理由もあったのかも。ちなみにラットの実験では、アルコールを含む餌を16週間摂取したラットは、血中IFG-1濃度と骨格筋のタンパク合成量がともに約40パーセント低下したそうです(Langら、 2001)。

筋に悪影響を与えず、健康にもよいアルコールの摂取量とは

おなじく『究極のトレーニング 最新スポーツ生理学と効率的カラダづくり』(石井直方、講談社)によると、欧米の研究では、

が適正値とされているそうです。ただし、これは「酒に弱くない人」の量であって、一般的日本人ならこの半分程度が適量とのこと。

まとめ

  • 飲酒はケガの回復を遅らせたり、即座に筋を破壊したり、骨格筋のタンパク合成量を下げたりする可能性がある。
  • 一般的な日本人なら、ビールなら1日約0.6リットル、ウイスキーなら約75ミリリットルの範囲にとどめるべき

なお、前述の長谷部誠氏の本によると、ヨーロッパで活躍する前Jリーガーたちが集まって食事会をしたとき、翌日オフの選手もふくめて誰もアルコールを飲まなかったそうです(p. 51)。さすがプロ。合宿でバカみたいに痛飲する体育会系学生や、「夏までに細マッチョになりたい」と言いつつ毎日運動後にビールをガバガバ飲むオヤジなんていうのは、しょせん何も考えてないアマチュアということなのでしょう。

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