パンプアップは24時間も続きません

ネットの掲示板で、


「筋トレしたら翌日もうフトモモが太くなっちゃいました! どうしよう><」
「それはパンプアップといって一時的なものです。気にせずトレーニングを続けましょう(キリッ)」

みたいなやりとりをあまりに頻回に見かけるので、誰かが書いとかなきゃなーと思って、書きます。

パンプアップは24時間も続きません。せいぜい10〜20分しか続きません。よって「筋トレの翌日もう太くなった!」というのは、パンプアップではありえません。おおかたただの錯覚か、もともとついていた脂肪のせいで太いのを筋肉のせいにしているかのどちらかでしょう。

パンプアップとはそもそも何か

以下、『筋トレまるわかり大事典』(谷本道哉 、ベースボール・マガジン社)より引用します(p. 92 - 94)。


筋肉が強度の高い運動をすると、乳酸やアデノシンなどの代謝物が筋肉内に多量に蓄積します。体内の各組織の溶液濃度は一定に保つ働きがあるので、このように代謝物が蓄積すると、周辺から水分が取り込まれて溶液の濃度を薄めようとします。こうして筋肉が水膨れを起こした状態がパンプアップです。


筋肉に蓄積した乳酸などの代謝物はいずれ血流にのって筋肉の外に出てしまったり、エネルギー源として使われたりしてなくなります。
パンプアップによる筋肉の膨張が続くのは10〜20分程度。時間が経てば、またもとの太さに戻ります。

ボディビルダーから見たパンプアップ

コンテストビルダーは、ステージに立つ直前に、会場の「パンプルーム」と呼ばれるスペースで懸命にパンプアップをはかります。こんな風に。

会場によってはパンプルームが狭かったり、設備が貧弱だったりで、なかなか大変なんですよこれ。屋外でやらなきゃいけないときもあります。もしも運動した次の日までパンプアップが続くのなら、家でゆっくりやってくれば済むと思いません? ビルダーたちがそうしないのは、パンプアップがせいぜい20分しか続かないものだと知っているからですよ。

なんでこんな誤解が広まっちゃったんでしょうね?

「筋トレの次の日太くなった(泣)」「それはパンプアップです」というやりとりを見かけたのは、1度や2度ではありません。なんでこんな専門用語がここまで間違った解釈で流通してるんだか謎です。ひょっとしたら筋肉フォビアの人たちにとっては、このトンデモ説は「これは筋肉で太くなったんじゃないの、『パンプアップ』なの」と自分をなだめる材料として都合がよかったのかも。でもさー、そもそも筋断面積を増やしたくない人が筋トレをすること自体が矛盾してるし、だいたい筋肉って「きのうトレーニングしたら今日すぐ増える」みたいな増え方をするもんじゃないはずなんですよね。パンプのせいにする前にノギスで皮脂厚を測れよ、まずはそこからだよ。