「筋肉を増やしても基礎代謝はたいして増えない、だからダイエットに筋トレは不要」説のウソ

ビリーやスロトレの流行以来、日本人も昔よりは熱心に筋トレに取り組む人が増えたと思います。しかしながら、それでも筋肉フォビアな方々はこんな珍説を繰り出して反筋トレを主張しているようです。


「筋肉1kgあたりの基礎代謝はわずか13kcal/day。だからダイエットで筋トレしても無意味、ジョギングの方がいい!」

この主張、筋肉1kgあたりの基礎代謝が13kcal/dayというところだけはそこそこ正しいんですよ。でも、後半は大間違い。実は筋トレによる基礎代謝アップは、筋量の増加だけによってもたらされるものではないからです。

以下、『筋トレまるわかり大事典』(谷本道哉、ベースボールマガジン社)より引用します。なお太字強調は引用者によります。


「3〜4ヵ月の筋トレによって筋肉などの除脂肪体重(LBM)が2kg程度増加し、100kcal/day程度基礎代謝が増える」(Brettら, 1999など)
筋トレで増加したLBMはほぼ筋肉量の増加によると考えられますので、「筋肉が1kg増加するに当たり基礎代謝が50kcal/day増加した」という計算になります。この結果は、問59の表*1に示した筋肉の基礎代謝率(組織1kgあたりの基礎代謝量)13kcal/kg/dayと合いません。筋トレを行うと筋肉の量的な増加では説明がつかないほどの基礎代謝の増加が起こるわけです。


これは、筋肉自体の基礎代謝率(組織1kgあたりの基礎代謝量)の増加という「質的な変化」も起こるためだと考えられます。
筋肉の基礎代謝率増加を示す間接的な証拠として、筋トレを行うことで安静時の筋血流量が筋量の増加以上に増加することが挙げられます。安静時の筋血流量は、筋肉の消費するエネルギー量を反映すると考えられています(筋肉の要求するエネルギー量・酸素量に応じて血流量が調整されている)。
われわれの研究グループの行った実験では、3ヵ月の筋トレによって安静時の下肢の筋血流量が35%も増加しました。これは下肢筋量の増加分の4.5%よりもはるかに大きな増加となっていることから、筋肉の代謝率が増加していることが示唆されます(Taninoら, 2009)。

というわけで、筋トレによる基礎代謝アップは、

  1. 筋肉の量的な変化(筋量の増加)による基礎代謝の増加
  2. 筋肉の質的な変化(筋肉が要求するエネルギーの増加)による代謝率向上

の2本立てとなっているらしいんです。「ダイエットに筋トレはいらない」派の方々は、おそらく上記のうち1にしか注目していない(あるいは1しか知らない)のではないでしょうか。ひょっとしたら「1日100kcal程度じゃ焼け石に水」派の方々なのかもしれませんが、そういう人はまず食生活を見直した方がいいと思います。100kcalって、体重50kgの人が時速8kmで2kmジョギングしたときの消費カロリーですよ。でかいですよこれは。
あと、「筋肉2kgも増やせない><」とおっしゃる方は、おそらくトレーニング法が激しく間違っているはず。ちゃんとお金をかけてジムに行く(公共施設なら1回200円なんてとこもありますよね)か、最低限でも本やDVDなどで勉強しましょう。ネット上の情報はウソが多いので、ネットだけ見て筋トレすると、失敗することが多いと思います。

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谷本 道哉

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*1:Eliaの研究をもとに、骨格筋や脂肪な各組織のエネルギー代謝率・代謝量を一覧表にしたもの。詳しくはElia, M. “Organ and Tissue Contribution to Metabolic Weight.” Energy Metabolism: Tissue Determinants and Cellular Corollaries. Kinney, J.M., Tucker, H.N., eds. Raven Press, Ltd. 1999. New York: 61-79.などを参照のこと)