脚の筋トレ/巷にはびこる「女性らしいしなやかな筋肉をつくる」の嘘について

今日は脚の筋トレ日。ブルガリアン・スクワットとデッドリフトで容赦なく使用重量を上げたため、サイド・ランジ時にはもうヘロヘロで、ごくささやかなウエイトしか使えませんでした。これは絶対にシビアな筋肉痛が来ると思い、トレーニング直後にプロテインを流し込んでからたっぷり30分半身浴し、ヨガとストレッチで念入りに下半身の筋肉をケア。これだけやっておけばだいぶ違うはず。

筋肉痛、で思い出したけど、巷で「女性向け」と称して宣伝されている自重エクササイズの売り文句がたいてい「ダンベルなどの重い負荷を使わず、女性らしいしなやかな筋肉をつくる」だったりするのって、爆笑もんの大嘘だと思います。というのは、筋肉には、

  • 自重トレで低負荷高回数の運動をして刺激できるのは遅筋繊維*1
  • 遅筋繊維は硬く、速筋繊維は柔らかい

という特徴があるからです。つまり、ダンベルやバーベルを使った高負荷低回数*2レーニングで速筋繊維を刺激した方が、よっぽど「しなやかな」筋肉がつくはずなんですよ。『筋肉まるわかりバイブル』(石井直方監修、ベースボールマガジン社)によると、実際、マラソンランナーのように遅筋繊維をよく使うタイプのスポーツ選手は筋肉や体が少し硬く、スプリンターは筋肉や体がやわらかいという傾向があるそうです。それなのにわざわざ遅筋繊維ばかり鍛えて「しなやかな筋肉をつくる」って、寝言は寝て言えと。
ちなみに、筋繊維が硬くなるかどうかは、トレーニング後のケアによっても変わってくるそうです。以下、同書p. 16より引用。


筋繊維自体が硬くなってしまうこともあります。無理なトレーニングで筋肉の損傷を繰り返すことで、筋肉中の結合組織(コラーゲン)が増えてしまうのが原因です。トレーニングにより筋繊維が死んでしまうと、そこに新たな筋繊維ができてくるのですが、それよりも手っ取り早く補習しようと結合組織がどんどん増え、繊維化してしまうのです。そうすると、筋肉全体が硬くなってくる。
この場合も、運動をした後にストレッチやマッサージなどで筋肉をケアすることが大切です。筋肉の回復を早めるような作業をしながら、トレーニングをしていくのです。激しいトレーニングをやりっ放しにして、筋肉痛が残っているのに、またすぐに激しい運動を繰り返すと、どんどんコラーゲンが増えてくる可能性があるので注意してください。
そんなわけで、本当に「しなやかな」体を作りたければ、自重で何十回も同じ動きを繰り返すよりも、

  1. ウエイトを使って適正な負荷をかける
  2. レーニング後にストレッチやマッサージで筋肉を入念にケア

の2点を守った方が合理的だと思います。
……と言うと、「ダンベルやバーベルなんか使ったらそれこそ男みたいなゴツゴツした体になっちゃう!」と騒ぐ阿呆が出てきそうなので念のため付け加えておきますが、男性なみの男性ホルモン分泌量があって、しかも例外的にたくさんの男性ホルモン受容体(リセプター)を上半身に持っていない限り、「男みたいな」体になんて、そうそうなれるものではありません。以下、前掲書より引用。


同じトレーニングをしてさえいれば、女性が男性と同じ競技レベルに達することができるわけではありません。男性には男性の体、女性には女性の体というものがあり、それは成長期が終った段階である程度決まってきます。男性の場合、男性ホルモンの影響を受けやすい上半身(僧帽筋三角筋、上腕筋など)が発達しますが、女性はその部分にホルモンの受容体が少ないので、筋肉がつきにくい。だから、男性と女性では上半身の筋力差が大きくなります。
成人してから同じトレーニングをしても、上半身に関しては男性の方が筋肉はつきやすい。女性の場合は、トップアスリートでも肩から腕にかけて筋肉が盛り上がっている人は少ないですよね。
トップアスリートなみの運動どころか、せいぜい5キロや10キロのおもちゃみたいなダンベルをチャカチャカ動かして「男みたいになっちゃう〜★」とか、それどんだけ自信過剰だって話ですよ。それでもどうしても自分の体に筋肉がつくことに恐怖を覚えてしまうのだとしたら、それって社会が作り出した「女は細くて貧弱な体こそが美しい」という歪んだボディ・イメージをもろに内面化しちゃってるってことだと思います。それを是正するもしないも個人の勝手ですが、ぬるい負荷でせっせと遅筋繊維(硬い)を鍛えながら「“女性らしい”“しなやかな”体をつくる」みたいな迷信を垂れ流すのだけはやめてほしいものです。笑いすぎてこっちの腹筋が痛くなっちゃいますから。

*1:すごく低いレベルでなら速筋繊維も刺激できますが、すぐ頭打ちになります。

*2:より厳密に言うと、低回数と言うより「中間回数」と呼んだ方が正しいです。具体的には8回からせいぜい12回程度。