体脂肪を減らしたい人&一生太りたくない人は迷わず読め! - 『一生太らない体のつくり方―成長ホルモンが脂肪を燃やす!』(石井直方、エクスナレッジ)レビュー

一生太らない体のつくり方一生太らない体のつくり方
石井 直方

エクスナレッジ 2008-01-17
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あなたは脂肪燃焼に関して、こんなことを思っていませんか?

  • 体脂肪を減らしたければ、まず有酸素運動をするのがベスト
  • 脂肪1kgのエネルギーは7000kcal。ということは、ジョギングで7000kcal消費すれば、1kgの脂肪が燃焼される
  • 有酸素運動で筋肉が増え、代謝が上がる
  • 筋トレでは脂肪は減らせない
  • 1年ぐらい必死で鍛えないと、筋肉はつかない

驚くなかれ、これらは全部間違いです。ということは、これらの思い込みに基づいて運動していても、体脂肪を減らすには遠回りだということ。『一生太らない体のつくり方―成長ホルモンが脂肪を燃やす!』(石井直方、エクスナレッジ)は、これらの迷信を廃し、運動生理学にもとづいた本当に効果的なダイエットを教えてくれる良著です。体脂肪を減らしたい人&一生太りたくない人は迷わず読むべし。

以下、同書の内容をごくかんたんに要約して載せてみます。

1. 体脂肪を減らすには、まず筋トレ

これには以下の2つの理由があります。

  1. 脂質や糖質の最大の消費者は筋肉
  2. 筋トレ後6〜48時間は代謝が高くなり、脂肪の使われ方も上がる

1-a. 脂質や糖質の最大の消費者は筋肉
  • 人体のエネルギー消費の約4割が筋肉によるもの
  • コアマッスルは「立っているだけ」「座っているだけ」でもエネルギーを消費する
  • 筋肉量が落ちると代謝が落ち、脂肪が増える

有酸素運動はたしかにエネルギーを消費してくれますが、一日中有酸素運動をしているわけにはいきません。でも、コアマッスルは座っていても自動的にエネルギーを消費してくれます。だから、ちょっとやそっと有酸素運動をやるよりも、筋トレで代謝自体を上げた方が効率よく体脂肪を減らすことができるんです。
と言っても、「代謝が上がるほど筋肉つけるなんて無理!」と思い込んでいる人も多いのではないでしょうか。ところが、実は筋肉をつける・つけない以前に、人間の体は筋トレをした直後にもう代謝が上がってしまうものなんです。

1-b. 筋トレ後6〜48時間は代謝が高くなり、脂肪の使われ方も上がる


私の研究室の実験結果から確かめられている範囲では、少なくとも運動後六時間は、代謝のやや高い状態が続くことがわかっています。アメリカの研究グループからは四八時間続くという報告もあります。だとすると、まる二日間、代謝の高い状態が続くということになります。
しかも、その代謝の高い状態の間に脂肪の使われ方が上がることもわかりました。普段なら糖と脂肪が使われる割合は五対五ですが、それが、四対六、あるいは三対七と脂肪が使われる率が明らかに高くなるのです。
このような現象が起こる理由は、「筋トレによって筋肉に負荷がかかり、その負荷によるストレスを修復しようとする機能が体のなかで働くから」。特に、筋トレ後に分泌されるアドレナリンや成長ホルモンは、脂肪を分解する働きが非常に強いそう。というわけで、「つらい筋トレで筋肉をつけてからようやく代謝が上がる」というわけではなく、「筋トレすれば、その直後から代謝が上がるし脂肪も分解される」んですよ実は。

2. 筋肉は3か月でつく

この本によると、筋肉を増やすには3か月は必要とのこと。アメリカの研究では、10代〜30代の人を対象とした実験では、3か月の筋トレで安静時代謝量が平均7.5パーセント、少ない人でも3パーセント増えた(p. 54)そうです。ということは、「筋肉なんて1年以上ハードなトレーニングをしなければつかない」などと初心者を脅かして喜んでいる自称トレーニーはただの嘘つきか、よっぽど間違ったトレーニングをしているってことですね。

3. 有酸素運動では、筋肉は増えない

特に女性には「ムキムキになりたくない。有酸素運動で筋肉を鍛えるから筋トレはいらない」なんていう人がよくいますね。でも、事実はこうなんです。


ほとんど紹介されることがないのが、「軽い有酸素運動では、筋肉量は増えない」という事実です。専門的なエアロビックダンスなど、インパクトの強いものは別として、有酸素運動では、決して筋肉は強化されないのです。どんなにウォーキングしても筋肉は増えません。

というわけで、有酸素運動だけで「一生太らない体」をつくるのは難しいようです。代謝の高い体をつくるのはあくまで筋トレであり、有酸素運動はエネルギーを消費するためのものと割り切った方がよさげ。

4. 筋トレと有酸素運動の組み合わせは、筋トレを先にやるのがよい

筋トレで体をつくり、有酸素運動でエネルギーを消費するとして、ではその両方をやる場合はどちらを先にすればいいのでしょう? 答えは、「筋トレが先」です。

冒頭で、「ジョギングで7000kcal消費すれば1kgの脂肪が燃焼されるというのは間違い」と書きました。それは、1-bで書いた「糖と脂肪が使われる割合」によります。単に有酸素運動だけを行った場合、消費されるエネルギーは糖と脂肪が5:5。すなわち、ジョギングで7000kcal消費しても、脂肪はその半分しか使われていないんです。
ところが、筋トレ後に有酸素運動を行うのなら、話は違います。1-bで書いた通り、筋トレ後少なくとも6時間は、糖と脂肪の使われる割合は4:6あるいは3:7まで変化します。筋トレによるアドレナリンや成長ホルモンで分解された脂肪を即エネルギーとして消費できるため、同じ距離だけジョギングしても、より効率よく脂肪が燃やせるわけです。
ちなみに、「有酸素運動のあとの筋トレでは、アドレナリンや成長ホルモンはあまり分泌されない」(p. 83)そうです。よって、まず筋トレを先にやってから有酸素運動を行うのがベスト。

5. どんな筋トレをすればいいのか

5-a. 強度・セット数・期間

  • やっと一〇回から一五回ほど上がる負荷を用いる。
  • 限界ギリギリか、それに近い回数の反復をする。
  • それを最低三セットおこなう。
  • そして、少なくても三か月は継続する。

厳密に言うと、速筋の筋量アップにもっとも効果がある負荷は80%1RM。これは、「1回しか挙げられない重量の80%」の意で、だいたい8〜10回挙げるのがやっとの重さです。ただし、これまで運動してこなかった人にはこれはキツい。その場合、65%1RM、つまり15〜20回繰り返すのがやっとの重量から始めるのがよいとのこと。
スロトレで行う場合はちょっと話が変わってきます。この場合は、50%1RM、すなわち普通に繰り返して30〜35回で限界がくる負荷が理想とのこと。これをスロトレのフォームとスピードでやると5〜10回反復するぐらいでキツく、それだけで筋肉が増えるそうです。

5-b. 頻度は週二、三回


疲労が回復する以前に同じ部分のトレーニングを行うと、効果は落ちる。反対に期間をあけすぎると、疲労と回復を繰り返すだけで、筋肉が増えることはない。週に2回、しっかりやるのがもっとも効果的。週3回おこなっても効果という面ではあまり変わらない。週1回では十分に大きな効果は得られず、やらないよりもまし、筋力を維持できる程度。2週間に1回では、ほとんど効果がない。
どうしても高めの頻度で運動したい人は、スプリット・ルーティンにすればOKです。これは全身を何日かに分けて鍛えるというもので、たとえば

  • 月:上半身
  • 火:下半身
  • 水:上半身
  • 木:下半身

という風に行います。

5-c. どの部位を鍛えるか

pp. 116 - 117の「抗加齢・燃焼ボディのために鍛えるべき主な筋肉」図から簡単なリストをつくってみました。●は「加齢とともに衰えやすい筋肉」、○は「代謝の多い筋肉」です。

これを見ると、たとえば「腕立て伏せばっかりしていても代謝は上げにくい」ということがよくわかりますね。腕立て伏せで主に使われるのは大胸筋・三角筋上腕三頭筋ですが、これらはどれも代謝の多い筋肉ではありません(※だからといって鍛えなくていいという意味ではありません。念のため)。要は、バランスよく戦略的に鍛えるのが大事ってことですね。
なお、この本には巻末付録として石井直方氏が推奨するスロトレのメニューの解説シートがついています。特に器具がなくても全身鍛えられる内容で、これなら筋トレ初心者にもわかりやすいのではないでしょうか。(欲を言えばDVDがついているともっとよかったのですが、それは同著者によるこのへん↓の本を見た方が早いかも)
スロートレーニング ビューティダイエット(DVD付)
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体脂肪を減らす筋肉をつける スロー&クイックトレーニング(DVD付)
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6. その他

この本には他にも、

  • 置き換えダイエット(食事代替型ダイエット食品によるダイエット)についての研究結果(pp. 186 - 188)
  • ビリーズブートキャンプのようなサーキットトレーニングをどう考えるか(pp. 161 - 163)
  • サプリメントはいつ、どう摂るか(pp. 146 - 148)

などの興味深い話題がてんこ盛りで、一介のトレーニーとしては読んでて面白くて仕方なかったです。これまでジムのコーチから聞いたことや、トレーニング関係のいろんな本で断片的に読んだことが、きれいに整理されてわかりやすく提示されている感じ。ダイエットの本を何冊も読むより、これ一冊読んだ方が早いですね。ていうか、「ビルダー時代に読んでいればコンテスト前の減量がもっと楽だったのに」と地団太を踏んでます今。

7. まとめ

運動生理学の見地から効率的なダイエット法を説く良著。ダイエットしたい若い女性からメタボが気になる中高年まで、非常に役に立つ本だと思います。いやー、いいもん買ったわ。もっと早く読みたかったわ。

後日付記

2009年に、続篇とも言うべき『一生太らない体のつくり方-スロトレ実践編』が出てました。

一生太らない体のつくり方-スロトレ実践編一生太らない体のつくり方-スロトレ実践編
石井 直方

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内容は、メタボ解消に成功した人、失敗した人の実例を上げて「なぜそうなったか」を解説したり、スロトレのメニューを詳しく(頻度や回数、強度など)解説したり、運動や食事その他についての一般的な質問に答えるというもの。モチベーションを上げたり、具体的な運動メニューを組んだりするのによさそうな内容となっています。