「ゲイ・フレンドリーな街だと思われたくない」米ジョージア州の学生、ゲイ少年のプロム参加に反対するデモを開催

先日のエントリ「「高校のプロムからレズビアン・カップルを排除するのは権利侵害にあたる」ミシシッピ州連邦裁判所が判断 - みやきち日記」に引き続き、プロム関係の話題です。今度はなんと、高校がゲイ生徒のプロム参加を許可したにもかかわらず、生徒達の側がこの許可に反対するデモ活動を行ったというニュース。

この高校は、ジョージア州ブレックリー郡コクラン市にあるブレックリー・カウンティ・ハイスクール(Bleckley County High School)。学校側が先週、同校の最上級生デリック・マーティン君に彼氏と一緒にプロムに参加する許可を与えたところ、他の生徒たちによる抗議デモが開催されてしまったとのこと。

ちなみにデモに集まった数十人のほとんどが、

  • デリックがゲイなのは問題ない
  • デリックがプロム参加を許可されたことも問題ない

と考えているそうで、では何が問題なのかというと、この許可のためにコクラン市がマスコミの注目を浴び、ゲイ・フレンドリーな土地だと思われてしまうことが嫌なんだそうです。


「デリックがゲイだということはわかっていました」と、抗議デモにやってきた高校3年生のKeith Bowman Jr.は述べた。「みんなは、(コクランが)同性愛に賛成している街だと思われるのが嫌なんです」
“We knew Derrick was gay,” said Keith Bowman Jr., a high school senior who showed up at the rally. “They don’t want (Cochran) to be known as a pro gay town.”


「この土地を知らない人は、これが皆の意見を反映していると思ってしまうだろう」と、コクランで空調機ビジネスを行っているおじいさんのジョン・スミスは言った。
“People who don’t know the area will think it reflects on everybody,” said John Smith, a grandfather who owns an air-conditioning business in Cochran.

なお、この抗議デモを組織したアンバー・ダスキンさんは、ブレックリー・カウンティ・ハイスクールの最上級生。高校の生徒達に、テキストメッセージでデモ参加を呼びかけたとのこと。ちなみに彼女はデリック君のせいでプロム参加を取りやめたんだそうで、高校にプロムのチケット代を返してくれと要求しているんだそうです。以下、彼女の弁。


「プロムに行ってそんな風にゲイの人たちと一緒に踊るなんて考えられません」と彼女は語った。「それに、これは単に彼が男の子を連れてくるというだけのことではないんです。それが世間の注目を集めてしまったということが問題なんです」
“I don’t believe in going up there and dancing with gay guys like that,” she said. “It’s also not just him bringing a boy. It was bringing all this attention to it.”

ちなみに当のゲイ生徒デリック・マーティン君の父親は、このハイスクールの数学教師。「ティーチャー・オブ・ジ・イヤー」を受賞した優秀な人らしいです。でも、このプロムにまつわるメディアの騒ぎを受けて、彼はデリック君を家から追い出してしまったとのこと。デリック君は今、コクラン市の友人宅に身を寄せているそうです。

デリック君の弁はこちら。


「みんなは僕がプロムに参加することはかまわないけど、それを僕が誰かに話すことはダメだと考えたんです」とデリック・マーティンは木曜日に語った。「メディアに注目されたせいで、みんなはコクランが公にゲイを容認するコミュニティではないかと怯えてしまったんです」
“People thought it was OK I was going to prom but not OK with me telling anybody,” Derrick Martin said Thursday. “All this media attention has gotten people scared Cochran is an openly gay community.”
なお彼は、

  • 抗議デモが行われたからといって、ボーイフレンドとのプロム参加を取りやめる気はない
  • 注目を集めると多くの人の不快を呼ぶので、プロムが終わるまでメディアと話はしないかもしれない

と言っているとのこと。

「プロム参加自体はいいけど、街がゲイ・フレンドリーな場所だと思われたら困るから反対」って、一種の差別のアウトソーシングだよねえ。「自分は差別しないけど、周りの人に変に思われたら困るから」とか言って、自分の差別的なふるまいの責任を誰ともつかぬ「周りの人」になすりつけるのと同じパターン。まあ、デモ活動を企画したアンバーだけは単なるゲイ嫌いのくそ女だと思いますが。「ゲイとなんか踊りたくない」って、お前結局それだけだろ反対理由は。

それにしてもこのプロムってやつ、同性愛者を参加不可にしても、参加OKにしても、結局騒ぎのタネになってしまうんですね。いっそ廃止しちゃえばいいのに、と思うけど、これもひとつの文化だから難しいのかなあ。
しかしさ、もしこれがたとえば

ってなことだったら、これはれっきとした差別と認識されるだろうと思うんですよね。それがこと同性愛となると恥ずかしげもなく「踊りたくない」だの「そんな街だと思われたくない」だのと口にしちゃう人が多いっていうのが、なんだかなあ、と思います。
あとさ、「街が」とか「コミュニティが」とか言うけど、デリック君だってこの街やコミュニティの一員のはずじゃないですか。なんでそこが軽やかに無視されて、「(非同性愛者だけの)街」が同性愛に賛成するかどうかっていう話になってしまうんでしょう。そこがもっとも気に入らないところでした。住民たちのこういう排他的な考え方を開陳しただけで、コクランが非常にゲイ・アンフレンドリーな土地だということは世界中に知れ渡ったでしょうし(現に、極東に住んでるあたしまで知ってるぐらいですしね!)、デリック君には無事プロムに参加させてあげてほしいと思います。