米国ワシントンDCで同性婚法が発効
- D.C. same-sex marriage law takes effect - washingtonpost.com
- Marriage equality becomes reality in D.C. | ProudParenting.com
米国ワシントンDCで昨年可決された同性婚法が2010年3月3日に発効となったというニュース。この日だけで約100組の同性カップルが結婚許可証の申し込みを行ったそうです。
申し込み一番乗りは、朝6時から並んだSinjoyla Townsendさん(41)とAngelisa Youngさん(47)。12年間連れ添ったカップルで、これまではドメスティック・パートナーとして登録していたとのこと。「クリスマスの朝に目覚めるみたいでした」「本当に夢がかなった感じ」とはYoungさんの弁。
なお、結婚を喜ぶカップルたちの写真は、washingtonpost.comでたくさん見ることができます。みんなとても嬉しそうで、見ているだけで幸せのお裾分けをしてもらった気分になりました。よかったね、みなさん。
しかし、これだけ同性婚のニュースを紹介していても、あたしには日本人(の大半)に同性婚の意味がちゃんと伝わってる自信がないなあ。
- 自分は同性愛差別なんてしない(だって別にレズやホモに悪意持ってないし!)
- 自分は日本人の典型である
- だから日本には同性愛者差別なんてない
みたいに思って、海の向こうの変わったトピックぐらいにしかとらえてない人が大半*1なんじゃないかって気がするわ、ときどき。差別って個人の内面に悪意があるかないかって話じゃなくて、「社会構造が原因で、特定の社会集団に不利益が集中すること」だと思うんだけど、そこは軽やかにスルーされちゃうんだよね。
たとえば今大地震が来てあたしの家が押しつぶされ、半死半生のあたしを救急隊が瓦礫の下から引っ張り出したとするじゃん? そのとき真っ先に連絡が行き、ICUに入れてもらえる「近親者」は誰なのか。かつてあたしを強姦しようとしたクソ親父と、その事実をもみ消そうとした鬼母ですよ。10年近く同居して毎日いっしょにごはん食べてる彼女ではないわけ。日本の現行法では、同性パートナーは「他人」だからね。そうそう、ICUって「2親等以内の親族」以外は入れてもらえなかったりすんのよ、知ってた? いまわの際に自分にとって大切な人ではなく、死ぬほど嫌いな強姦魔とその共犯者のツラしかおがませてもらえないあたしの絶望を少しは考えろよ「ボクは差別しないから日本に差別はありません」的脳内お花畑野郎はよ。
で、あたしがそのまま植物状態に陥ったらどうなるか。延命治療をどうするかの決定権は、クソ父と鬼母にあり、あたしの彼女は何ら口出しできません。さらに、あたしがそのままくたばったら遺産も全部クソ両親が持ってくんだよね、ほら『ミリオンダラー・ベイビー』のアレみたいにさ。仮にあたしが「遺産は全部彼女に遺します」と遺言書いてたって、配偶者控除ってもんがないあたしらは、既婚ヘテロカップルなら払わなくて済む税金をどーんと取られるだけなのよ。遺族年金だって、彼女には遺せないのよ。このあたしの絶望を少しは考え(ry
他の例も挙げとこうか? 医療費控除、あるよね。家族全員で1年間に払った医療費が計10万円を超えたら、税金が還付されるってやつ。ヘテロ既婚カップルならふたりで10万越えりゃ即対象だけど、同性カップルは「家族」じゃないので、ひとりで10万越えない限り還付対象になりません。病気で働けない同性パートナーを養ってる人なんて、大変よ。同性同士だと、健康保険だってパートナーのそれにぶらさがることはできないし、それで経済的に行き詰まって共倒れ寸前になっているレズビアンカップル(女性の賃金はただでさえ低いですからね)だって実在する。こういう構造上の不利益を放置すんなって話であって、「ボクがワタシが内心同性愛者をどう思っているか」なんて死ぬほどどうでもいいんだよね、極端な話。
同性婚合法化というのは、こういう社会のシステム上での不平等を是正するためのひとつの手段なんだと思います。唯一の解というわけでもなければ、最適解かどうかも議論の余地がたっぷりある*2けれども、何もしないで手をこまねいているより(あるいは精神論だけぶちあげているより)よっぽどマシな選択だとあたしは考えています。とりあえず、「少なくともこの人たちは瓦礫の下で押しつぶされたときパートナーを呼んでもらえるんだ、いいなあ」というのが、washingtonpost.comの皆さまを見たときあたしが真っ先に思ったことでございました。DCではまだまだ同性婚反対派が策を弄しているようですが、今後このカップルたちの幸せがおびやかされることがないよう切に祈ります。