マレン米統合参謀本部議長、同性愛者の軍勤務を是認


【2月3日 AFP】マイケル・マレン(Mike Mullen)米統合参謀本部議長は2日、米上院軍事委員会の公聴会で、同性愛者であることを公言する者の米軍勤務を禁じた法律の撤廃を「正しいことだ」と語り、撤廃を支持する意向を示した。

マレン議長は、「わたし自身、あくまでもわたし自身に限って言えば、ゲイやレズビアンを公言する人びとの軍勤務を認めることは正しいことだと考えている」と語った。

ということで、軍の上層部からも"don't ask, don't tell (DADT)"撤廃を支持する姿勢が出てきているみたいです。AFPによると、「米軍の制服組トップの統合参謀本部議長が同性愛者の軍勤務を禁じる方針の撤廃に賛意を示したのはマレン氏が初めて」だとのことで、この発言の持つ意味は大きいと思います。過去には、「元」統合参謀本部議長のシャリカシュビリ氏がDADT廃止を提言したことはあった*1んですが、現役制服組トップがこうした発言をしたことはなかったみたいですねどうやら。

ただ、あんまり手放しでは喜べないのは、


一方で、マレン議長とロバート・ゲイツ(Robert Gates)米国防長官は、この法律を廃止した場合の影響を1年かけて調べる計画を明らかにしており、少なくとも今後1年間はこの問題をめぐる具体的な動きはないとみられる。
ということ。結局、オバマ大統領と同じで、具体的にいつまでに撤廃されるかという確約はないわけですよ。

ニューヨーク・タイムズが、この「調査」についての反応をいろいろ集めていて、面白かったです。2つほど引用してみます。

まず、UCLAサンタバーバラ校の政治科学助教授Aaron Belkin氏の意見。


このようなためらいがちな態度は不必要なばかりか、思慮に欠けている。
Such tentativeness is not only unnecessary, but unwise.

1993年のランド・コーポレーションの研究では、同性愛者であることを公言する者の軍隊勤務は問題ないが、戦場での不安や疑念を避けるため、新しい方針は「出来る限り迅速に決断し、実行に移され」ねばならないという結論が出ている。英国、カナダ、イスラエルの軍隊では、同性愛者であることを公表している者の軍勤務を認めると政治家が決定した後、ただちに差別を撤廃したポリシーが実行に移され、成功をおさめている。
A 1993 Rand report concluded that openly gay service is unproblematic, but that the new policy must be “decided upon and implemented as quickly as possible” to avoid anxiety and uncertainty in the field. The British, Canadian and Israeli militaries implemented inclusive policies almost immediately after politicians decided to allow open gay service, and their experiences were successful.

次に、米空軍の復員軍人で、“Language and Gender in the Military”(直訳すると『軍隊における言語とジェンダー』)という本の著者であるEdith A. Dislerさん。


長年ペンタゴンにいたので、このような「調査」が、次の指導者に交代するまで決定を先送りにするための手段だということはわかりきっています。指導者なのに「指導」はせず、責任回避しているんです。
I had enough years in the Pentagon to know that a “study” is a tried and true method of putting the decision off onto the next round of leadership. It isn’t “leading”; it’s a cop-out.

というわけで、今の段階ではまだまだ油断は禁物と言ったところでしょうか。引き続き、関連ニュースを見守っていきたいと思います。

単語・語句など

単語・語句 意味
Chairman of the Joint Chiefs of Staff (CJCS) 統合参謀本部議長
tentativeness ためらいがちなこと、不確かさ
cop-out 言い逃れ、責任回避(をする人)
implement 履行する、実行する