ロンドンの強姦未遂犯のMtF受刑者、女子刑務所に移送される権利を得る
ロンドンの刑務所に収監されている手術前のMtFトランスジェンダーが、女性刑務所に移送される権利を勝ち取ったというニュース。
先日紹介した「カナダのトランス女性の終身囚、連邦矯正局に性別適合手術を要求 - みやきち日記」にちょっと似たケースですが、大きく違うのはこちらの受刑者(氏名は明かされず、『受刑者A』とされています)には女性に対する強姦未遂の前科があるということ。
受刑者Aはまず男性の恋人を絞め殺した容疑で2001年に有罪判決を受け、2003年に釈放されています。釈放1週間後に女性店員相手に強姦未遂事件を起こし、「ツーストライク」制度(2度目の犯罪で量刑が重くなる制度)によって今度は終身刑となったとのこと。弁護団は、彼女の起こしたこれらの犯罪は、女性になりたいという願望や、医療に対して彼女が感じていたフラストレーションと結びついていると主張しているそうです。
2004年のGender Recognition Act(ジェンダー公認法)により、この受刑者(27歳)は、法的には既に女性と認められています。ホルモン療法とレーザー脱毛はしていますが、性別適合手術はまだ受けてはいません。性別適合手術を受けるには希望するジェンダーでの一定期間の生活歴が必要なため、男子刑務所にいては性別変更を完遂できないというのが彼女の主張です。
今回、ロンドン高裁のDavid Elvin QC裁判官は、彼女を男子刑務所に収監することは欧州人権条約に反するとし、「原告を男子刑務所にとどまらせる限り、彼女は目指す手術への道を閉ざされてしまう」と述べています。受刑者Aは、数週間以内に女子刑務所に送られるとのことです。
ものすごく議論を呼びそうな事例ですね、これ。「法的に女性と認められている人を男子刑務所に入れておくのはおかしい」という視点もあるでしょうし、「強姦未遂歴があり、かつ手術前の人を女子刑務所に移すのは他の受刑者にとって危険」という意見もあるでしょう。「それなら同性同士でレイプ事件を引き起こした人はどこに収容すればいいのか」という疑問も出てきますし、ほんとに難しいです。Pink Newsのコメント欄など、さまざまな意見が飛び交っていて大変興味深いので、ご興味がおありの方はぜひご一読を。
単語・語句など
単語・語句 | 意味 |
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The European Convention on Human Rights | 欧州人権条約 |
breach | (法律・約束・協定などを)破る |
claimant | 原告、権利主張者、請求者、申請人 |
Gender Recognition Act | ジェンダー公認法 |