マサチューセッツ州司法長官、「婚姻防衛法は違憲」と連邦政府を訴える

2009年7月8日、マサチューセッツ州のMartha Coakley司法長官が、婚姻防衛法は違憲であるとして連邦政府を相手に訴訟を起こしたというニュース。

婚姻防衛法(DOMA, Defence of Marriage Act)とは1996年、ハワイで同性婚が認められた(その後すぐ、無効とされてしまいましたが)後に成立した法律。内容は、

  1. たとえそれが他州では婚姻と認められた関係であっても、州(または合衆国内の政治区域)は、同性間の関係を婚姻として扱う必要はない。
  2. 連邦政府は、婚姻を専らひとりの男性とひとりの女性の間に結ばれた法的結合と定義する。
  1. No state (or other political subdivision within the United States) needs to treat a relationship between persons of the same sex as a marriage, even if the relationship is considered a marriage in another state.
  2. The federal government defines marriage as a legal union exclusively between one man and one woman.

といったものです。

今回の争点は、上記のうち「婚姻を専らひとりの男性とひとりの女性の間に結ばれた法的結合と定義する」という部分。婚姻防衛法のこの節のために、マサチューセッツ州の同性配偶者が所得税の控除、雇用や退職に対する給付金、そして社会保障制度などから排除されてしまっているというのが原告側の主張です。

海を隔てた日本でのほほんと暮らしていると、「マサチューセッツ州では同性同士で結婚できるんだー、すごーい、時代は進歩してるのねー」とか考えて終わっちゃう人がわりと多いような気がします。でも、考えてみたら連邦政府同性婚を認めていない以上、いくら州内で結婚できても、国単位で婚姻カップルに与えられている恩恵には預かれないわけですよね。上記のように納税や社会保障に関する権利についてもそうだし、先日「米国市民をパートナーに持つフィリピン系レズビアンマザー、強制送還の危機に直面 - みやきち日記」で紹介したように、外国人パートナーの移住申請の身元保証人になれないなんてのもそう。また、Advocate.comの記事によると、マサチューセッツ州の軍人墓地の維持費は連邦政府から出ているため、戦死者の同性配偶者を埋葬することはできないんだそうです。死んでからまで差別されるだなんて、セネガルのこの事件を連想しちゃいましたよまったく。

Coakley氏は婚姻防衛法の廃止を支持し、「1996年以来、時代は変わっていると誰もが認めることでしょう」と語っています。裁判の行方を注意して見守りたいと思います。

単語・語句など

単語・語句 意味
attorney general 司法[法務]長官(米国では法務省や州の最高法務官)
conference call 電話会議、電話会見
income tax 所得税
preclude (あらかじめ)排除する、除外する