同性カップルは病院でどう扱われているか?(その2) - ニューヨーク・タイムズの特集

同性カップルは病院でどう扱われているか?(その1) - オレゴンのゲイ男性、パートナーの病室から追い出される - みやきち日記」の続きです。

「その1」で紹介したオレゴンのケースも含めて、ニューヨーク・タイムズが、同性カップルが病院で直面する不当な扱いについて以下のような特集記事を組んでいます。

こちらで紹介されている事例をざっと訳してみると、こんな感じです。


カリフォルニア州イカーズフィールドで、レズビアンカップルが、40℃の熱を出した子供を緊急治療室に連れて行った。このカップルはドメスティック・パートナーとして登録済みだったが、病院は生物学的母親にしか付き添いを許さなかった。一般的に病院では子供の親は2人とも治療に付き添えるものだが、この一件では同性パートナーの母親は強制的に待合室で待機させられた。


ワシントンの女性が、マイアミでの休暇中に倒れた。彼女の同性パートナーは、患者のadvanced health care directive(訳注:意思決定能力を失った際の代理人や、どのような医療を受けたいかについて前もって指示しておく公的文書)を所持していたが、病院の職員はフロリダ州の法律では彼女は家族と認められないと言った。実際には、彼女がワシントンから持ってきていた書類は法的に有効だったのだが、彼女が病院の管理者相手にそれを証明するのに何時間もかかった。証明には成功したものの、患者の容態は悪化し、亡くなった。この問題のために、患者が同性パートナーと共に育てていた子供たちは、患者が亡くなる前に面会することができなかった。


異性愛者のカップルなら、口頭で「妻です」「夫です」と名乗れば済むことが、同性カップルだとたとえ登録済みのドメスティック・パートナーだろうと、法的に効力のある書類を持っていようとこういう扱いを受ける可能性があるわけです。

なお、上記の2例はどちらも、Human Rights Campaign(『人権キャンペーン』、LGBTの権利団体)の調査によって明らかになったもの。Human Rights Campaignは、LGBTが置かれているこうした状況を鑑み、この5月に2009年度版の Healthcare Equality Indexを発表しています。これはアメリカ国内の166の医療機関を、LGBTに関する方針と実践に基づいて調査・評価したレポートで、以下の5つの評価基準に焦点が当てられています。

  1. 患者に対する差別がないこと
  2. 見舞いに関する方針
  3. 意思決定に関する方針
  4. 啓発的な能力開発教育
  5. 雇用ポリシー及び従業員のパートナーへの保険適用

Human Rights Campaignはこの調査の結果から、

  • 75パーセント近くの病院が、性的指向による差別から患者を守る指針を持っている
  • しかし、時々、病院の職員にその指針が伝わっていないことがある

と言っているそうです。

同性婚どころかドメスティック・パートナー制度すらない日本のセクマイとしては、これまで「法で権利が保障されればだいぶ違うんじゃないか」と単純に思ってしまっていましたが、実際にはそうでもないわけですね。法整備だけでも、企業ポリシーを整えるだけでもダメ。現場の従業員教育が行き届いていなければ、パートナー(や、パートナーと一緒に育てている子供)の生死に関わる局面であっさり蹴り出される可能性もあるわけ。そういう意味で、非常に考えさせられた記事でした。

なお、上記のHealthcare Equality Indexはpdfで全文読むことができます。ご興味がおありの方は以下のリンクからどうぞ。

http://www.hrc.org/documents/Healthcare_Equality_Index_2009.pdf

単語・語句など

単語・語句 意味
emargency room 緊急処置[治療]室、ER
typically 一般的に
official 職員
deteriorate 悪化する
criteria criterion(判断・評価の基準、標準、尺度)の複数形
visitation 見舞い
competency 能力、力量、適正、法的権限
cultural 文化[啓発]的な