ルイジアナのゲイ・ファーザー、同性パートナーとの別離で、息子と会う権利を剥奪される


米国ルイジアナ州で同性パートナーと共に息子のSethくんを育てていたDale Liuzzaさんが、パートナーとの別離後、Sethくんとの面会等が法的に保証されないという事態に直面しているそうです。

詳細は以下。

Daleさんと元パートナーのChrisさんは、2004年に代理母出産を通じて息子のSethくんの親となりました。受精には、DaleさんとChrisさんの両方の精子を混ぜ合わせたものが使用されました。2人とも、どちらがSethくんの生物学的な父親なのかは知らず、また気にもしていませんでした。ところが2009年にこのカップルが破局を迎えると、Chrisさんは自分が生物学的な親だとつきとめ、Sethくんを連れてまずテキサスへ、次にワシントン州と引っ越してしまったのだそうです。

このため、これまで育児を大いに担当していたDaleさんは、いきなりSethくんとは法的に完全な「他人」として切り離されてしまいました。Daleさんは現在、2ヵ月に1度しかSethくんに会うことができず、電話で話せる時間も限られているそうです。「(子どものことを)考えてしまって夜も眠れない」とDaleさんは語っています。

もしもこの2人が異性カップルであれば、Daleさんは別に血がつながっていなくてもSethくんと養子縁組をして法的に「親」となる(これを『セカンドペアレント・アダプション(2人目の親の養子縁組)』と言います)ことができていたでしょう。ちなみに同性カップルであっても、州によってはDaleさんの立場の人が子どもと養子縁組できるところもあります。しかし米国では、ルイジアナ州を含む30以上の州では、同性カップルの「セカンドペアレント・アダプション」は認められていません。よって、Daleさんの立場では、子どもに対する共同親権はおろか面会権すら保証されないわけ。なお、別にパートナーと離別しなくても、法律上の親と認められない方の同性愛者は、パートナーの書いた手紙を持参しなければ学校に子どもを迎えに行けない、子の入院時に病室に入れない、自分の健康保険に子どもを加入させられないなど、異性カップルには存在しないさまざまな不利益をこうむることとなります。

ABC Newsによると、2010年のセンサスのデータでは、米国でLGBTの親によって育てられている子どもの数は約200万人いるのだそうです。またAll Children Matterの2011年の報告によれば、米国では既婚の異性カップルによって育てられている子どもは全体の69パーセントで、1970年の83パーセントという数値から減少しているとのこと。その一方で、現在では女性同士のカップルの24パーセント、男性同士のカップルの11パーセント、そしてトランスジェンダーの38パーセントが育児中なのだそうです。つまり、子作りや育児が既婚シスヘテロカップルだけのものだった時代はとっくに終わっているのに、制度が現実に追いついていないというわけ。

今日ビートたけしの揶揄とオルバーマンの演説 - Togetterを見ていたら、コメント欄に「なんで結婚という制度にこだわるのか理解できない」だの、「結婚には相続や扶養家族とかの法律上の優位性があるとは思うんだけど、同性愛異性愛関わらず子供を作らないカップルにそこまでの優位性を認めるべきとは思わんなあ」だのという頓珍漢な意見があり、失笑を禁じ得ませんでした。上に示した通り、同性カップル=子どもを作らない存在という発想自体がもはや数十年遅れているんです。制度にこだわっているというより、制度から蹴り出されているために実害が起こっているから「公平にしろ」と言ってるんですよ。そのためのひとつの解決策として同性婚を実現させるという考え方があり、それに賛同する人が一定数いるってことです。

念のため補足しておきますが、子どもがいない同性カップルであっても、異性カップルにはない不利益はいろんな形で発生します。以下、参考記事をいくつか。

法整備(それが必ずしも同性婚のかたちを取る必要があるかどうかは議論の余地がありますが)によってこうした実害をなくすのは決して「優位性を認める」ことなどではありません。それは、「パートナーと暮らしていく上での、あたりまえの生活基盤を守る」ことにすぎません。

たぶんここでこんなこと言ってても「同性カップル=子どもを作らない存在」教の信者の皆さまには通じないだろうなとは思うんですけどね。でも、いつか誰かがふと疑問に思って検索したときひょっとしたらこの情報がひっかかるかもしれないと思って、このエントリを書きました。