ペンギンのゲイカップルの子育て絵本『タンタンタンゴはパパふたり』、「アメリカ人がもっとも禁止して欲しいと思う本」リストのトップに

米国図書館協会(ALA)の調査で、ペンギンのゲイカップルの子育て絵本『タンタンタンゴはパパふたり』が、「アメリカ人がもっとも禁止して欲しいと思う本」2008年度リストのトップに輝いたとのニュース。ちなみに日本のAmazonの商品説明によると、この本の内容はこんなです。


動物園にはいろんな家族がいます。でもペンギンのタンゴの家族はちょっと違っていました。
ロイとシロのパパふたりとタンゴ、それがタンゴの家族なのです──。


ロイとシロのおすペンギンは、いつからかお互いに気に入り、カップルになりました。一緒に泳いで一緒に巣づくりして、いつも一緒にいました。
ところが、他のカップルは、ただ一緒にいるだけでなく、どうやら巣の中で何かをあたためている模様。しかもそうこうしているうちにそのあたためたものがかえって赤ちゃんペンギンが誕生しているではありませんか。
ロイとシロは、近くにあった卵の形をした石を拾ってきて、さっそく毎日毎日交替であたためはじめました。でも石のたまごはちっともかえりません。
そんな様子を眺めていた飼育員がはたと思いつきます。
他のペンギンカップルが育てられなかったたまごをそっとふたりの巣においてやります。そして、ふたりにしっかりあたためられた卵から、タンゴが生まれたのです──。


ニューヨークにあるセントラル・パーク動物園で実際にあった話を絵本にした『and Tango makes three』の邦訳版です。


なかなかかえらない石のたまごを暖め続ける切なさ、待ちに待った赤ちゃんペンギンが生まれる瞬間、読み終わった後、ほんのりあたたかい気持ちになれる絵本です。


子供たちにも、そして大人たちにも、読んでもらえるとうれしい一冊です。

タンタンタンゴはパパふたり
タンタンタンゴはパパふたりヘンリー コール 尾辻 かな子 前田 和男

おすすめ平均
stars小さい時だからこそ
stars人間いろいろ、鳥もいろいろ
starsイレギュラーな家族に向けられる共感
starsジェンダーについて子どもにさらりと読める絵本

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というわけでこれは実話に基づくほのぼのストーリーであり、別にわいせつな内容でも暴力的な内容でもありません。それなのにゲイの話なら即ダメだなんて、先日映画『ミルク』を上映禁止にしたサモアのことを笑えないわよアメリカ。この絵本は「反宗教的、反家族的で、ゲイを支持している」("anti-family, anti-religion and pro-gay")という理由で叩かれているとのことですが、それって裏を返せば「ゲイに宗教はない、ゲイは家族を作れない、わしらはゲイを支持しない」っていうマジョリティの狭量さの表れよねー。

もっともこのリスト、過去にはマーク・トウェインの『ハックルベリー・フィンの冒険』が「人種差別表現がある」という理由で登場したり、『カラー・パープル』が「性的内容、同性愛的内容、侮辱的な言葉遣い」で、そしてマヤ・アンジェロウの『歌え、翔べない鳥たちよ』が「性的内容」であげつらわれたりしているそうですから、はじめからそういうものだと思って生暖かい目で見守っておくのが正しいのかもしれませんが。でも、米国図書館協会のCaldwell-Stoneさんのこの言葉は、やっぱり胸に染みます。


すべての本がすべての読者に合っているというわけではありません。でも、本を読む人は誰でも、自分や自分の家族に合った本を選ぶ権利がありますし、図書館や教室や書店ではそうした本を選べるようになっていなければなりません。
そう、何も万人にむりやり読ませろっていうんじゃないんですよね。要は「選択の自由をくれ」ってこと。たったひとつのロール・モデルしか許さない社会は、やはりおかしいと思います。

単語・語句など

単語・語句 意味
American Library Association (ALA) 米国図書館協会