BennettのDMISモデルでホモフォビアを分析してみる試み

DMISとはDevelopment Model of Intercultural Sensitivityの略で、自民族中心主義(Ethnocentrism)から民族相対主義(Ethnorelativism)へと至る計6つの段階をモデル化したものです。これって、異性愛中心主義から多様なセクシュアリティの共存の状態に至る段階の説明に使えそうな気がします。で、やってみた。

Ethnocentric Stage - 自民族中心主義、または自文化中心主義(このエントリでは、『異性愛中心主義』を指します)

Ethnocentric Stage(自民族中心主義の段階=自分の文化の見方がすべての現実を規定する段階)の3つの段階

  1. Denial(否定)
    • Isolation(隔絶):異性愛者だけで固まる。「人間はみんなヘテロである」状態。
    • Separation(隔離):セクシュアルマイノリティのふるまいを見ないようにする。「同性愛者が教職につくことは許されない」など。
  2. Defense(防御)
    • Denignation(侮辱):相手に対して否定的なステレオタイプで判断する。「ホモはなよなよしている」「バイセクシュアルは淫乱」など。
    • Superiority(優越感):相手の文化を低く見る。「同性愛はアンダーグラウンドなもの」「異性にもてない人が走るのが同性愛」など。
    • Reversal(反動):相手の文化が全て良く見える(自分の文化は悪く見える)。「禁断の恋は美しい!」「男同士の愛は男女の愛より上!」など。←※一部のやおい好き/百合好きは今ここ
  3. Minimization(矮小化)

Ethnorelative Stage - 民族相対主義、または自文化相対主義(このエントリでは、『多様な性的指向の人々の共存の状態』を指します)

Ethnorelative Stage(民族相対主義の段階=いろいろな文化の観点から現実を見ることができる段階=共存の状態)の3つの段階

  1. Acceptance(受容)
    • Respect for Behavioral Difference(行動の違いの尊重)
    • Respect for Value Differencce(価値観の違いの尊重)
  2. Adaptation(適応)
    • Empathy(共感):相手の文化の枠組みから物事を見ることができる。
    • Pluralism(多元論):多様性の肯定。
  3. Integration(融合)
    • Contextual Evaluation(文脈からの評価):「今、ここで何が起きているか」という文脈から物事を評価する(「この人はゲイだから/ヘテロだからこうなったのだ」という評価をしない)。
    • Constructive Marginality(肯定的に辺境人となる):文化の中心でなく端の方にいる人となり、他の文化との接点に積極的にかかわっていく。

まとめと補足

前から頭の中で考えてたことなんだけど、ようやくどうにかまとめられてよかった。どっか間違っているところがあったら後で直します。
この表を使って考えると、たとえばヘテヘテな人から罵言や勘違い発言を浴びせられたとき、「なるほど、この人はこの段階にいるんだなあ」と一歩引いて判断することができて便利ですよ。異性愛中心主義から離れられない人に対していちいち怒っていると疲れるから、まずはこうして相手のヘテヘテ度(というか、自文化中心主義度)を見極めてから対処法を練るのが吉だと思います。別にこれ使わなくても、Riddle Homophobia Scale(参考)を使うって手もありますけどね。

蛇足

DMISはもともと異文化コミュニケーションのモデルだから、それを使って「異性愛者の文化」「セクシュアルマイノリティの文化*1」という異文化同士のかかわりについて読み解くことができるのは当然と言えば当然かも。同じモデルを使って例えば「男性文化」と「女性文化」の関係を見るとか、「非オタク文化」から「オタク文化」へのまなざしを分析するとか、いろいろな遊び方ができると思います。興味がおありの方はぜひやってみてください。

*1:ひとことで「セクシュアルマイノリティの文化」と言ったって、その中にもさらに多様な文化が存在しますけど。