ウィスコンシン州の図書館、Ex-gay関連の書籍を置けと抗議される

今年の6月に、ゲイのティーンエイジャーが登場する本を所蔵していることを非難されていた米国ウィスコンシン州の図書館が、今度は「Ex-gayの(=同性愛者から異性愛者に転向した)著者による本を所蔵しないのは『差別的』」としてEx-gay団体から攻撃されているというニュース。

この図書館が6月に所蔵を非難された本というのは、Francesca Lia Blockの"Baby Be-Bop"という小説。ヤングアダルト向けの作品で、ゲイの主人公が己のアイデンティティと格闘したり、ホモフォビックな集団からたたきのめされたりする描写があるというものです。Christian Civil Liberties Unionという団体が、この本を蔵書とすることに反対したとのこと。

で、同じ図書館に対し、今度はParents and Friends of Ex-Gays & Gays (PFOX) という団体が、同性愛に肯定的な本は置かれているのに「Ex-gayの著者による本や、異性愛的見地から書かれた本が無視されている」と抗議しているんだそうです。以下、PFOXのエグゼクティヴ・ディレクターRegina Griggs氏の発言。


「明らかに、ウエストベンド・コミュニティ・メモリアル図書館は多様性に興味がないようです」
"Apparently, the West Bend Community Memorial Library is not interested in diversity.

「ex-gayの本を拒否する一方で、同性愛を促進するような子供向けの本を提供する図書館は、検閲や、一方的なイデオロギーによる若者の教化に音を立ててキスしているようなものです」
a library to provide children's books which promote homosexuality while denying ex-gay books smacks of censorship and indoctrination of youth with a one-sided ideology,"

異性愛以外のセクシュアリティをよしとしないEx-gayの皆様の口から「多様性」「一方的なイデオロギー」なんて表現が出てくるとは驚き。

いろいろな意見があるとは思いますが、個人的には、ゲイ小説もEx-gay著者の本も両方置いて、図書館の利用者が好きに比較検討できるようにしておけばいいんじゃないの、と思います。心情的には、効果がないばかりか危険もあると指摘されている(参考:「同性愛者を異性愛者に『転向』させる治療は無意味」専門家が指摘 - みやきち日記米国心理学会、同性愛者を異性愛者に『治療』するセラピーに反対 - みやきち日記)Ex-gay関連の本を悩める若者たちには読ませたくないと思わないではないのですが、だからと言って禁書にしろとまで言ったら、「心情的に、若者には同性愛関係の情報を見せたくはない」という人たちの意向にも従わねばなくなりますからね。

ただ、圧倒的に異性愛が優位に置かれているこの社会で、ゲイ関連書籍とEx-gay関連書籍をただ並べておきさえすれば即公平なのかと言ったら、それも微妙な気がしないでもないんですが。この図書館がどのような判断を下すのか、気になるところです。

単語・語句など

単語・語句 意味
protagonist 主人公
outlool 見解、態度
smack …に音を立ててキスをする
indoctrination 教化、洗脳