「ドロドロしてるのはレズ、そうじゃないのは百合」みたいな分類をしたがる異性愛者って

創作作品について、「ドロドロしてるのはレズ、そうじゃないのは百合」みたいな分類をしたがる異性愛者って、レズビアンの友人・知人が一人でもいるんでしょうか。いないんだとしたら、知りもしないくせになんで「ドロドロしてるのはレズ」なんて言い切れるんでしょう。個人の勝手な妄想だけでヘンなイメージを垂れ流されて、この世に実在する本物のレズビアンが悲しんだり腹を立てたりしないとでも思ってるんでしょうかね。
あたしはレズビアンで、つまり「レズ」とカテゴライズされるたぐいの人間であるわけですが、今日は朝7時に起きて猫に餌をやり、それからスクランブルエッグをのせたトーストと牛乳とコーヒーで朝食をとりました。その後、仕事に行く同居人を送り出し、皿を洗い、2杯目のコーヒーを飲みながら新聞を読み、宅急便を受け取り、今こうして日記を書いています。これから掃除と洗濯をし、何本かメールを書き、午後には家を出て勤務先の塾に向かい、2次方程式と2次関数の講義をがっつりやって帰ってくる予定です。気合いを入れて資料を作ったので、応用問題を教えるのがとても楽しみ。で、こんなあたしの生活のどこが「ドロドロ」なんでしょうか。だって「レズ」は「ドロドロ」してるんでしょ? それともこのあたしが「レズ」じゃないとでも?
そうそう、「肉体関係があるのはレズ」という定義をする方もいらっしゃいますね。だとすると、あたしたちレズビアンはセックスしてる瞬間だけ「レズ」なんでしょうか。それとも、セックスをする日は「レズ」で、しない日は「ノーマル」なんでしょうか。まさか、過去に1度でも女性と肉体関係を持てば「レズ」になるだなんて迷信*1を抱いてるんじゃないでしょうね。それだと「過去に1度でも異性と肉体関係を持てば『ノーマル』」って屁理屈も成り立つし*2、処女と童貞にセクシュアリティはないって暴論にもなっちゃうわよ。んな阿呆な。
「所詮創作の話なんだから現実と違う」って言い訳は通らないわよ。「現実とは違う」って言うのなら、わざわざ現実に生きてる人間を表わすカテゴリ名を使って失礼な物言いすんじゃねーっつーのよ。もしこれが人種や国籍を扱った話で、実在の国名を名指しで挙げて「ドロドロしてるのがA国人、そうじゃないのがB国人」なんて第三者が決めつけたら大問題になるでしょ。あるいは、障害者(障碍/障礙者)が登場する話について、健常者が「ドロドロしてるのが●●障害、そうじゃないのが▲▲障害」って言い放ったら、やっぱりめちゃくちゃ失礼でしょ。なんで「レズ」だけは部外者が好き勝手に侮辱しても文句が来ないと思うのかね。「レズ」はノンケが夢想する創作作品の中にしかいない架空の生物だとでも思ってるのかね。その程度の貧困な想像力で、なーにが創作(描く/書く側にしろ、読む側にしろ)だ、笑わせんなボケ。
ていうか当事者でもないくせに迂闊に「レズ」なんて単語を口に出しちゃう時点で「不勉強だし傲慢だし大馬鹿でーす」って言ってるようなもん*3だから、そんな輩にここであたしが何言ったって無駄なんだけどね。そういう人は、架空生物「レズ」が作ってるサイトなんかこの世に存在しないと思ってるだろうしね。というわけで、以上、愚痴でした。
※追記:http://d.hatena.ne.jp/miyakichi/20061006#1160104945

*1:「人間は生まれたときは全員異性愛者のはず。それが何らかのきっかけ(同性とのセックス、とか)で同性愛者に『なってしまう』のだああっ!」みたいに、同性愛を何かの穢れとか感染症みたいに思ってる馬鹿ノンケは、こういう迷信が大好きよねー。

*2:ゲイに関してはどうだかよく知らないけど、レズビアンはむしろ過去に男性とつきあった経験を持つ人の方がそうでない人より多いと思います。詳しくは『「レズビアン」である、ということ』(掛札悠子、河出書房新社)あたりをご覧になってください。……と思ったら『ゲイ 新しき隣人たち』(モートン・ハント著、窪田高明訳、河出書房新社)の中に、男性同性愛者についての記述を発見。男性同性愛者の場合、「約半数はいずれかの時点で性交(引用者注:女性との性交のこと)も経験する(女性に関心も性的感情もまったく抱いたことのない男性のゲイは、全体の四分の一にすぎない)」(p111)だそうです。

*3:なぜ異性愛者が迂闊に(←ここ重要。この語を使うリスクがちゃんとわかっているのであれば、話はまた変わってきますから)「レズ」という語を使うのが大馬鹿なのかわからない方は「レズ 侮蔑」のgoogle検索結果をどうぞ。