わたしたちはどこにでもいます。
まず、以下にあげるリストをご覧ください。長いので、読み飛ばしちゃってもOKです。
- 一般事務
- 医療事務
- 営業
- 受付
- 生産管理
- 販売員
- 試食販売員
- 喫茶店ウエイトレス
- キャバクラホステス
- 調理師
- 主婦
- ルート配送
- 長距離ドライバー
- タクシードラーバー
- 工場内作業員
- 編集業
- ライター
- グラフィックデザイナー
- DTP
- CADオペレーター
- 塾講師
- 教員
- 英会話講師
- 家庭教師
- 保育士
- 看護師
- 歯科技工士
- 医師
- 介護職員
- 翻訳業
- 水泳インストラクター
- スポーツクラブのインストラクター
- 葬儀社職員
- ビューティーアドバイザー
- ミュージシャン
- 学生
- ガソリンスタンド店員
- 弁護士
- カジノのディーラー
これはいったい何かと言うと、あたしがこれまで話したことのあるレズビアンの職業リストです。自分自身が経験した職種もいくつか入っています。
同性愛者だからと言って、何か異性愛者と違う特殊な生活をしているわけではありません。皆ごく当たり前に職業を持ち*1、社会の一員として働き、そうして得たお金で淡々と暮らしています。「同性愛なんて気持ち悪い、俺の/私の目の届かないところにいるなら認めてやる」とおっしゃる異性愛者のみなさんは、自分が今日買い物をしたコンビニのレジ打ちさんが同性愛者かもしれないということすら気づいていないわけで、これは大変滑稽ですね。自分が通った保育園の保育士が、喫茶店で水のおかわりを頼んだウエイトレスが、そして自分の家に宅配便を届けに来るドライバーが同性愛者でも何の不思議もないということに、異性愛者はいいかげんに気づくべきです*2。同性愛者は異性愛者から隔絶した遠い世界で得体の知れない生活を送っているわけでも、24時間同性との恋愛やセックスのことばかり考えているわけでもなく、しごく当たり前に「社会」や「世間」の一部を構成しているのです。
だからと言って、まるで『遊星からの物体X』みたいに疑心暗鬼にかられて「こいつも同性愛者かも! こいつも、こいつもだ!」と恐怖や憎悪を撒き散らされても困るんですけどね。同性愛者から何の危害も加えられていないのにいちいちパニックしてしまうというのは、同性愛者ではなく異性愛者の側の問題です。その根っこにあるのは防衛機制で言うところの「投射」(自分の中の嫌悪感や攻撃欲を相手に投影し、『向こうが俺を嫌って危害を加えようとしているんだ』などと思い込む)かもしれないし、「他者が自分の鏡像として思い通りにふるまってくれない」という、全能感の失墜(あるいは他者コントロールの失敗)から来る憤怒なのかもしれません。なんにせよ、それを見つめ直し解体して行けるのは、当の異性愛者だけです。あたしら同性愛者にできるのは、現実を突きつけて、「目をさましてくださいね」と言うことぐらいのもの。
というわけで、最後にもう一度現実をつきつけておきます。あたしたち同性愛者は、本当にどこにでもいます。あなたの行きつけのキャバクラのホステスが、同性愛者かもしれません。あなたの会社の平凡な事務員が、あるいは美人受付嬢が、またはフォークリフトオペレーターが、営業のエースが、同性愛者かもしれません。ひょっとしたら、あなたのお母さんが同性愛者だということだってあり得ます。「誰もそんなそぶりを見せなかった」? それは、同性愛者は何か特殊な言動をするはず、というあなたの思い込みです。「そんなことは耐えられない」? あなたが耐えられようと耐えられまいと、現実をあなたの持っている「人類皆ヘテロ」という妄想の形にねじ曲げることはできません。いいかげんに現実を直視して、それに慣れてください。