『レナード現象には理由がある』(川原泉、白泉社ジェッツコミックス)感想
レナード現象には理由がある | |
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微妙な理由その1:絵柄が迷走気味
男性キャラの顔が、耽美リーマンBLと『Y氏の隣人』(吉田ひろゆき、集英社ヤングジャンプコミックス)を足して2で割ったようで不気味です。特に「ドングリにもほとがある」の友成真一郎の目の描き方は『Y氏の隣人』そのもので、「耽美にしたいのかシュールにしたいのか、どっちだ?」と悩みました。
- 参考:
Y氏の隣人 (4) 吉田 ひろゆき
おすすめ平均
第四巻
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あと、「大人っぽいいい男」の表現(立ち絵)が全部一緒なのはどうかと思います。具体的には、p75、p81、p84、p93、p109、p115の保科聡真、p122と152の塔宮拓斗が全部、まるでコピーのような「胸板厚くて背が高い男が左側を向いて半身で立ち、左手をポケットにつっこんでいる」という絵なのがすごく奇妙な感じでした。しかもサイズまでほぼ同じだというのがくどいです。
微妙な理由その2:ゲイの扱いがひどい
収録作「真面目な人には裏がある」は、いち同性愛者としては読んでてだんだん眉間に皺が寄ってしまう箇所が多かったです。
- 「(ホモは)そもそも基本的に子孫を残せない人達なんだから」(p150)
- 「幻獣バジリスク」(p138)
- ノンケって残酷だなーと思った。たとえギャグでも、あたしがこれまでに一生懸命カミングアウトしたノンケさんにもこんな風に思ってる人がいたのかも、と思うと泣けてきます。
- 「ホモ判定実験」(pp160-166)
- いくらギャグだとしても、ここまでコテコテに偏見を垂れ流さんでも。そもそも男が好きな男がゲイだってことや、同性愛者はノンケには惹かれない人の方が多いってことが全然わかってないっぽいのがイタい。絵柄だけでなく脳までBL脳になっちゃったんですか川原さん。
微妙な理由その3:話の枠組みが全部一緒
ここまで全部「のんき者の女の子が完璧超人*1の気難しい男の子とくっつく話」にせんでも。
まとめ:いいところもないわけじゃないんですけど……
蕨よもぎや亘理美咲のようななごみ系のキャラは川原泉の本領発揮って感じですし、動物を使ったギャグも楽しいです。饒舌で漢字が多いネームもいつも通りで楽しめました。「耳に瞬膜」なんてところも好きですね。でも、上に挙げたマイナスポイントがそれらを全て相殺してしまって、結果、プラマイゼロになっている感じです。逆に言えば、この絵柄やゲイへの偏見が気にならない人なら「買い」な作品だと言えますが、この路線ではあたしはもう川原泉は読まなくなるだろうなあと悲しく思いました。
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*1:厳密にはそれぞれ悩みも抱えていたりして、必ずしも「完璧」ではないかもですが。