デンマークのゲイバー、店内での異性同士のキスを禁ずる


デンマークのゲイバーが店内での異性同士のキスを禁じ、議論を呼んでいます。「不公平だ」という声もあれば「ゲイバーはゲイのための場所なのだから自重すべき」(要約)という声もあるようです。
詳細は以下。

ことのあらまし

このゲイバーは、コペンハーゲンにある「Never Mind」というお店。2012年4月、男女でキスをしていた客がバウンサー(用心棒)から異性愛者同士のキスは禁止だと言われ、店を出て行くよう要求されたそうです。
この女性はヘテロで、「Homosocialt Fællesskab」というLGBT団体の創始者であるJobbe Jollerさんと一緒に、ゲイとヘテロの混じったグループで来店していました。Jollerさんは「黒人同士のキスを禁じるのと同じだ」とバウンサーに抗議しましたが、聞き入れてもらえなかったとのこと。さらに、ちょうどそのときJollerさんの別のノンケ友達がコンビニから戻ってきて、彼らも入店を断られてしまったそうです。おそらく男女で手をつないでいたからではないかとJollerさんは述べています。

いろんな人のいろんな意見

元記事では、この一件についてさまざまな角度からの意見が紹介されています。以下、箇条書きでまとめます。

「Homosocialt Fællesskab」(LGBT団体)の創始者、Jobbe Jollerさんの意見
  • この店がやっていることは病気
  • デンマークじゅうのLGBTが受容と平等のために戦っているのに、「Never Mind」はその逆のことをしている
異性とのキスを見とがめられた女性、Mathilde Karlsen Hansenさんの意見
  • 最初は冗談かと思った
  • 店内で男性にキスしている女性は他にもいたので、不公平だと思った
  • ドアマンから法律を持ち出され、オーナーからは訴訟も辞さないと言われて、自分が犯罪者になったみたいな気がした
  • 自分はコペンハーゲンゲイシーンが好きで、ゲイ友たちと一緒に楽しみたいと思っている
ゲイバー「Never Mind」のオーナー、Christian Carlsenさんの意見
  • 3〜5人ものノンケ友達を連れて来られるのは、ゲイバーにふさわしくない
  • 女性客が深夜、ノンケの男友達を電話で呼び出すことがあり、この男友達連中がよく泥酔してゲイ客とトラブルを起こす
  • コペンハーゲンには異性愛者のための場所はたくさんあるが、ゲイバーは数店しかない
    • 同性愛者には、相手が同性愛者か異性愛者かいちいち考える必要なしに他の同性愛者と出会える場所が必要
    • 異性愛者はゲイバーの外でも他の異性愛者と会えるが、ゲイは外で出会いを求めたらひどいことになる
別のゲイバー「Club Christopher」のオーナー、Thomas Roseさんの意見
  • 異性愛者の客に反対はしないが、条件はある
    • 隅に座って「ショウを眺める」ために来店するのではなく、ゲイ・パーティーをリスペクトして参加すべし
    • 同性から口説かれても文句を言わず、礼儀正しくきちんと断るべし
  • 異性愛者も同性愛者も同じルールに従ってもらう。ゆえに異性愛者も、ゲイ・パーティーをリスペクトして参加している限りは、キスでもなんでも好きなことをしていい

まとめと感想

難しい問題ですね、こりゃ。上記の中では「Club Christopher」のオーナーさんの意見にいちばん同意できるかなあ。「ゲイ・パーティーをリスペクトして参加すべし、意に染まぬ相手から口説かれたら礼儀正しくきちんと断るべし」っていうルールはわかりやすいし、どんなジェンダーセクシュアリティのお客さんでも共有できるところがいいと思うんですよ。これならバイセクシュアルや、ジェンダーが男女カテゴリに当てはまらない/当てはめたくない人も排除せずに済みますし、いい落としどころなんじゃないかと。

日本のゲイバー・レズビアンバーにしか行ったことのない自分ですが、リスペクトのない「珍獣観察ツアー」みたいなノリの人ってやっぱり嫌なものです。「そんな人本当にいるの?」とお思いの方には、以下が参考になるかと。

あと、わざわざゲイ向けの場所に来ておいて、同性に口説かれたからと言って嫌な顔をされても困るし(『ゲイな雰囲気は楽しみたいけど、自分がゲイだと思われるなんてまっぴら!』ってのはただの搾取じゃね?)、怒ったり喧嘩されたりするのはもっと困る。

異性愛者同士のキスについては……ええと、正直「なんでノンケがわざわざゲイバーまで来ていちゃつきたがるのよ?」と一瞬思わなかったと言ったら嘘になりますが、でもそれを言ったら同性愛者が常に言われてる「おまえら人前(ここでは『ノンケの目の前』の意味ですね)でいちゃつくな、おまえらの場所でだけいちゃついてろ」というよくある圧力も認めなきゃならないってことになりますからね。そう思うと、こういう考え方はやっぱり不公平だと思うんです。てなわけで「Club Christopher」のやりかたに賛成。できれば「嫌がる相手を無理やり口説くな」というルールも付け加えてくれるともっと嬉しいかも。おもにバリタチのレズビアンやノンケ男性で、「強引なおれさま=男らしい」という思い込みからフェム女性に迷惑をかける人っていますし。

なお、エントリ冒頭に貼った元記事のサイト「Homotropolis」に対し、ゲイバー「Never Mind」のオーナーは、異性愛者が手をつなぐことはかまわないが、キスや性的な接触、ポールダンス用のポールにぶらさがることなどは認められないと言っているそうです。うーん。気持ちはわからんでもないけど、難しいなーやっぱり。