魔法はニーズが一致したところに生まれる - 穴の位置問題ファイナル

「そこに穴は開いてません」「うさぎさんのお口の向きについて(と書くと一見メルヘン風)」に続く、穴の位置問題の話です。たぶんこれが最後。

創り手と受け手のニーズが一致したとき、「ウソ」は「魔法」になる

あたしはこの「On Your Mark」が大好きなんですけれども、この作品における羽根の生えた女の子キャラの描き方って、あからさまにウソですよね。物理的に言って、羽根で空を飛ぶには、大胸筋がもっとありえないほどモリモリについていなければ無理です。さらに、鳥そっくりの翼があるのに、腕や手もあるというのもおかしい。つまり、ヒト型の華奢な少女の背中に羽根が生えてて空を飛ぶこと自体が、理屈から言うとすごく怪しいわけです。
でも、そんなことはどうでもいいんですよ。あたしは男達が天使のような少女を助け出すところが見たいし、可憐な少女が自由に空を飛ぶところが見たい。お話の世界のことなんだから、何か未知の力を使って飛ぶ美しい生き物がいたって全然かまわないじゃんか! と思います。で、それはおそらく、描き手さんたちも同じだと思うんですね。
このように創り手のニーズと受け手のニーズが一致したとき、受け手は作品世界の価値体系を喜んで受け入れることができるようになります。もっとわかりやすく言えば、現実のしがらみから解き放たれて、創り手の作り出した魔法にかかることができるようになります。その魔法にかかりたい一心で、人は創作作品を見るんだとあたしは思っています。

穴の位置とニーズの問題

で。穴の位置問題ですが。
解剖学的にありえない位置に膣口を描くというのは、「多少位置が変でも*1、とにかく結合部分を見せたい!」という描き手さんのニーズが絡んでいるんじゃないかと思います。そして、それを是とするのは、「とにかく結合部分を見たい!」というニーズがある受け手さんでしょう。多分、この「挿入箇所を最優先したい」というニーズが合致している状態ならば、受け手は穴の位置が多少怪しくても無事魔法にかかって作品世界を楽しむことができるんだと思います。
問題はあたしのように、結合部分にそれほど重きを置いていない受け手の場合ですね。極端な話、あたしなんかレズビアンだから、チンコ(またはチンコ的なもの)の挿入なんてほとんど興味がないわけで、ドリルで骨削って作ったような位置の穴で「ほらほら挿さってます」と嬉しそうに結合部分を見せられても「なんか痛そうでやだ」としか思えません。別にレズビアンでなくても、結合部分より全体のバランスが気になる方なんかだとやっぱり、穴の位置が変な絵では魔法にかかりにくくなってしまうんではないかと思います。というわけで、全てはニーズの一致・不一致にかかっているのではないかとあたしは思いました。

まとめ

  • 創作作品は何もかもリアルである必要はない
  • 創り手と受け手のニーズが一致したとき、リアルでないものが「魔法」となって受け手を魅了する
  • ニーズが一致しないとき、受け手は「魔法」にかかることはできない

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*1:一枚絵の絡み描写で結合部分をはっきり見せるのって、多少はウソをつかないと構図的に難しいケースが多そうですしね。