わりとしっかりしたつくりでした - 中学生日記「誰にも言えない」(前編)感想

※以下、性暴力に関係する内容です。フラッシュバックを起こしそうな方はご注意ください。
結局、録画して2回通りほど見てみました。きちんと下調べしたとおぼしき、わりとしっかりしたつくりでした。次週の後編(http://www3.nhk.or.jp/omoban/main0710.html#20060710001)も見てみようと思ってます。
*1によってフラッシュバックを起こすとか、自分が許せないとか、触られるのを嫌がるとか、あのへんはサバイバーの典型的な反応だと感じました。主人公の、「どうしてぼくはあのとき、動けなくなってしまったんだ。どうして気持ち良くなってしまったんだ」と自分を責める台詞も、性暴力をふるった中年男の「お前はもう俺から離れられない。決して人に言うんじゃないぞ」という脅し文句も、よくあるパターンだと思います*2。そんなわけで、全体的にドラマというより教科書を見てるみたいな感じでしたが、性暴力の実態を誇張せずに伝えるという意味で、これはこれでいいのでしょう。
きちんと「性暴力」ということばが使ってあったのも、良かったです。「いたずら」などという軽い表現でごまかすのは、問題の矮小化につながり、被害者をさらに苦しませることになるからです。念のため、以下、『子どものころに性虐待をうけた女性のためのガイド』(p41)より引用。


性虐待は、その人の人生に長期にわたり深く影響する行為です。まさに犯罪です。そのように許しがたい行為に対して「いたずら」という言葉は、「そんなにたいしたことはない」といった印象を与えてしまい、性虐待に対する社会的認識を誤らせてしまいます。その結果、犬にかまれたと思って忘れてしまいなさい」といった”善意からくる”言葉が出てきてしまうことにもなります。
また、被害者が自分の被害を正しく認識しにくくなることがあります。「たいしたことではない」と思うことで、怒りや哀しみといった感情を否認してしまうことになりがちです。そうすると、何が自分を生きづらくさせているかが、見えにくくなってしまうこともあります。
そして、加害者が容認されることにもなります。性虐待は犯罪であると認識されていないと、加害者は虐待行為を繰り返すことにもなりかねません。
ある意味、主人公のように中学生の段階で怒りや苦しみを噴出させることができた子はラッキーだと思います。ていうか、うらやましいよ。性暴力を受けた人は、長い間沈黙を守ったままでいると、摂食障害うつ状態・解離・怒りの衝動・嗜癖の問題など、さまざまな苦しい症状を抱え込むはめになります。それはどれも過酷な状況を生きのびるための大切な手段なのですが、経験しないで済むのならそれに越したことはないです。以下の、番組の最後に流れたテロップが、性暴力やその後遺症に悩んでいる人の助けになってくれるといいなと思います。
性暴力は男性でも受けることがあります。
被害を受けたら、信頼できる人に相談してください。
相談を受けた人はその事実を信じてください。
信じること それが回復のための力になります。
とりあえず後編も見てみるつもりでいます。ご都合主義的な「そんなに簡単に解決しねーよ!」みたいなオチにならないといいなー。あと、ちょこっと気になってることをいくつか箇条書きしておきます。

  • 前編冒頭で野球部員数人に押さえつけられてちんこしごかれてた子のトラウマは大丈夫なわけ? 
  • 黒川先生が職員室で柏木の話題を出したとき、白髪の先生が顔をしかめたのは何故?
  • 後編で柏木の扱いはどうなるんだろう。きちんと告訴すんの? うやむや?

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*1:もちろん、人によってフラッシュバックのきっかけは違います。詳しくは『性虐待を受けた人のポジティブ・セックス・ガイド』第11章「引き金を大切に扱う」参照。

*2:現実にはもっとたちの悪い脅迫の方が多そうな気はしますけどね。たとえば「お前が悪いんだ」と被害者に責任を押し付けたり、人に話しても誰も信じないと思い込ませたり、口外すれば学校や部に迷惑がかかると脅したり。