フランス、聖職者の児童性虐待を同性愛と結びつけるバチカンを批判

性的虐待についての話題が含まれます。フラッシュバック注意。

カトリック神父による小児性虐待スキャンダルに際し、バチカンから小児性愛を同性愛と結びつける発言がなされ、フランスがそれを厳しく糾弾したというニュース。

このスキャンダルというのは、カトリック神父が1950年代から20年以上の間、米国ウィスコンシン州で200人以上の聴覚障害児を性的に虐待していたというもの。ローマ法王が虐待の事実を知りながら隠蔽していたという告発もあり、蜂の巣をつっついたような騒ぎになっています。詳しくは以下のリンク先をどうぞ。

で、このスキャンダルに関して、バチカンの書記官であるBertone枢機卿が以下のような発言を行ったのだそうです。


「多くの心理学者が禁欲主義と小児性愛は無関係だと証明しているが、私が最近聞いたところによると、同性愛と小児性愛の間に関連があると証明している心理学者はたくさんいるそうだ」
"Many psychologists and psychiatrists have shown that there is no link between celibacy and pedophilia, but many others have shown, I have recently been told, that there is a relationship between homosexuality and pedophilia."

つまり、性的虐待の原因は宗教上の禁欲主義ではなく同性愛だってことにしたいらしいんですよこの人。

この発言はもちろんゲイの権利運動家から激しい批判を受けたとのこと。ABC Newsによると、ゲイ・アクティヴィストでイタリアの元下院議員のFranco Grillini氏はロイターに対し、「バチカンは虐待事件で背負い込んだ自らの問題をどう扱ってよいかわからず、自分たちの肩に乗った『十字架』を我々に押しつけようとしている」と話しているそうです。

そして、Bertone枢機卿小児性愛と同性愛をいっしょくたにしたことに対し、世界で最初に国として公式な批判を浴びせたのがフランス。国民の実に60パーセントがカトリック教徒であるフランスです。以下、仏外務省のスポークスマンBernard Valero氏のことば。


「これは許し難い結びつけであり、我々はこれを糾弾します。フランスは、性的指向およびジェンター・アイデンティティーに関連した差別や偏見と、断固として戦っております」
"This is unacceptable linkage and we condemn this. France is firmly engaged in the struggle against discrimination and prejudice linked to sexual orientation and gender identity."

偉いぞフランス。

ところでこの事件に関しては、日本のゲイ男性の中にも「バチカンの“ゲイが”起こした事件である」と受け取っている人がいるようです(実際、ネットでそう書いている人を見かけました)。でも、少しでも児童性虐待について調べたことがあれば、その認識は不正確だとわかるはず。以下、性的被害の男性サバイバーを支援するサイトIf He Is Rapedより引用。


偏見2:性被害の少年の大半が、同性愛の男性から加害されている。
少女を性虐待するペドファイル(子どもを性行為の対象にする人)(注3)が異性愛者として振るまっているように、少年を性虐待するペドファイルもまた同性愛的な傾向を示していません。
加害者の大半は、被害者の性別や年齢にそれぞれの好みを持っていますが、少年を探しているペドファイルもそのほとんどが同性愛者ではありません。彼ら加害者は、あくまで子どもを性の対象に選ぶペドファイルなのです。

そんなわけで、加害者と被害者のジェンダーだけにとらわれて小児性愛と同性愛をいっしょくたにするのは変です。どさくさに紛れて自らの「十字架」を同性愛者に押しつけようとしているバチカンの策略にわざわざ乗ってどうする。バチカンにはさっさと自分の頭の蠅を追ってほしいし、同性愛者と児童性虐待加害者とをごっちゃにする風潮も、いい加減に世の中からなくなってほしいです。

単語・語句など

単語・語句 意味
secretary of state 書記官