中国初のLGBTプライド・パレードの動画がリリースされる
中国初の、オンラインのLGBT TVチャンネル「同志亦凡人(Queer Comrades)」が、同国初と言われるLGBTプライド・パレードの動画をリリースしています。
- Queer Comrades | Changsha LGBT Pride Takes Place, Organizer Detained
- Video of first gay pride parade in China released | Gay Star News
これは湖南省長沙市で2013年5月17日に、すなわち第9回国際反ホモフォビア・トランスフォビア(IDAHO)の日に実施された「長沙プライド」(Changsha Pride)の映像だとのこと。中国では2009年以来、上海で毎年プライド・フェスティバルがおこなわれていますが、そちらはイベントだけでパレードはないのだそうです。中国国内でLGBTパレードを敢行したのは、この長沙プライドが初だと言われています。
長沙プライドには北京、香港、広東、重慶、湖北、浙江などからLGBTとその支援者が100人以上集まり、差別との戦いを呼びかけたそうです。残念ながら中国国内ではデモンストレーションへの取り締まりが厳しく、このイベントも無許可だったため、パレードのオーガナイザーで19歳のXiang Xiaohanさんは逮捕されてしまいました。しかしながら、この動画のナレーターは以下のように話しています。
「わたしたちは、このイベントを失敗と呼ぶのは間違いだと考えている。一方、次回もっとうまくやるにはどうするかを考える必要はある。また、Xiaohanとその仲間の勇気をたたえ、イベントの大成功について彼らにお祝いを言わなければならない」
'We think that's a mistake to call the event a failure. While we need to think how to do better next time. We also have to celebrate the courage of Xiaohan and his team and congratulate them on a very successful event.'
ちなみにXiang Xiaohanさんは12日間拘禁されたそうですが、次は15日拘禁されるだろうと話しつつも、「またイベントを開いてそうなるのなら、わたしはかまいません」と言っているそうです。
こういうプライド・パレードの話になると「こんなことをしても世の中は変わらない」とか、「マジョリティに気持ち悪がられるだけだから逆効果」とかいう批判が、特に日本人の間ではよく出てきます。昔はそれにも一理あるかなと思わんでもなかったのですが、最近ちょっと考え方が変わってきました。プライド・パレードって、マジョリティをどうにかすることを第一義としてやるものじゃなくね? あれは、LGBT(と、その仲間や味方)の存在と、これまで歩んできた旅路を祝うためにやるもんじゃね?
LGBTだと名乗って堂々と道を歩くこと。人前で恋人と手をつなぐこと。声を出して抗議すること。そういうことができるようになるまで、どれだけの道のりと戦いがあったかは、あたしたちだけが知っています。その「道のり」って、「1969年にストーンウォールで暴動があって」みたいな、外から見た歴史の話だけじゃありませんよ。『It Gets Better: Coming Out, Overcoming Bullying, and Creating a Life Worth Living』(Dan Savage & Terry Millor [編]、Dutton)感想 - みやきち日記で紹介したような、マイノリティひとりひとりの内面の戦いや決死のサバイバルの話でもあるんですよ。その長い長い道のりとマイノリティたちの存在自体を祝うというのが、プライド・パレードの第一義なんじゃね?
LGBTに無関心な、あるいは否定的なマジョリティは、ここでは祝われてないんですよ。そこにお客様気取りでやってきて「もっと俺たち/わたしたちの気に入るようにしろ」と言われても、苦笑するよりほかありません。同様に、奴隷頭みたいなメンタリティのマイノリティから「これではシスヘテロご主人様がご気分を害する」と叱られても、やっぱり苦笑しか出てきません。「マジョリティやそのお取り巻きを進んでもてなしてくれる場所は世界中にたくさんあるんですから、そちらに行かれてはどうですか」と謹んでご提案申し上げるのみです。
オーガナイザーが12日も拘禁されたことには心痛みますが、そんなわけで今回のこの「長沙プライド」にもとても大きな意義があったとあたしは思います。当日その場には行けなくても、この動画を見て勇気づけられた人は絶対にいると思うわ。リスクを冒して集まった皆さまの勇気に、心からの敬意と拍手を。