五輪開会式のレズビアン・キス、称賛と憤激を呼ぶ


2012年ロンドン五輪の開会式で、いろんなカップルのキスシーンが流れる場面がありました。その中にほんの一瞬だけ女性同士のキスシーンが盛り込まれていたことが、各方面の称賛と憤激を呼んでいます。

詳細は以下。

経緯をご存知ない方には、AfterEllen.comの説明がわかりやすいです。


開会式を見ていなかった方のために文脈を説明すると、こうなる。「歴史に対する英国の重要な貢献」という全体的テーマの一環として、デジタル時代についてのストーリーで、メールで仲良くなった「フランキー」と「ジューン」という2人のティーンエイジャーの姿が描かれた。この子たちが初めてキスする場面で、巨大スクリーンには『フォー・ウェディング』から『わんわん物語』まで、有名な映画やTVのキスシーンが映し出された。そのちょうど真ん中に、『Brookside』の一場面が、つまりベス・ジョーダッシュ (アンナ・フリエル) とマーガレット・クレメンス(ニコラ・スティーヴンソン) の初めてのキスの場面が含まれていた。
In case you didn't watch the ceremonies, here's the context. As part of the overall theme of Britain's important contributions to history, the storyline about the digital age featured two teenagers, Frankie and June, who fell in like via text message. As the two kids kissed for the first time, a video on the huge screen showed famous movie and TV kisses, from Four Weddings and a Funeral to Lady and the Tramp. The Brookside clip ― Beth Jordache (Anna Friel) and Margaret Clemence's (Nicola Stephenson) first smooch ― was right in the middle.

『Brookside』は英国のTVドラマ。このキスシーンが放映されたのは1993年で、これは英国で大人向けの深夜枠以外で放送された初めてのレズビアン・キスなのだそうです。オリンピック開会式で流れたのはほんの0.5秒ぐらいで、まばたきするだけで見逃すぐらいの短い場面でした。

この場面は、サウジアラビアを含めて、同性愛を違法とする77ヶ国でも検閲されずにそのまま放映されたそうです。中東諸国で同性同士のキスシーンがテレビで流れたのはこれが初とのこと。米国のテレビ局NBCがこのシーンをカットしたという噂も流れたそうですが、以下の検証動画によると、カットはされてなかったみたい(0:46〜に注目)。
NBC Did NOT cut the lesbian kiss - YouTube

ちなみにドラマ内でのオリジナル版キスシーンはこちら。かわいいもんでしょ?
Margaret-Beth - YouTube

AfterEllen.comのコメント欄は、開会式のこのシーンを喜ぶ声でいっぱいです。レズビアンの可視化を喜ぶ意見もあれば、「てっきり幻覚かと思ったけど、AfterEllenを見て初めて本当だとわかった」、「思わず『女の人同士がキスしてる!!』と叫んでしまってパートナーを驚かせた」、「『全部異性愛者のキスだわ』と同居人に言っていたところにあの場面が出てきて、思わずソファーから飛び上がった」なんてコメントもありました。

しかしながら、当然というべきか、開会式の監督であるダニー・ボイルには保守派から激しい非難が寄せられています。Gay Star Newsによると、英国の政治家エイダン・バーリーは、Twitterで以下のようにつぶやいたそうです。


「これまでに見た中でもっとも左寄りの開会式だ――共産国の首都である北京より左寄りだ! 次は福祉賛歌か?」
‘The most leftie opening ceremony I have ever seen -- more than Beijing, the capital of a communist state! Welfare tribute next?’


「選手たちが来てくれてやれやれだ! これでサヨク多文化主義的たわごとから離れられるぞ!」
‘Thank God the athletes have arrived! Now we can move on from leftie multi-cultural crap.’

なお、ダニー・ボイルは政治的アジェンダを推し進める意図はないとし、以下のように述べているとのこと。


「すべての人があれを気に入るわけではないでしょうが、正直でほんとうに誠実であると認めることはできるでしょう」
‘Not everybody will love that but people will be able to recognize as being honest and truthful really,

犬(『わんわん物語』)のキスもモンスター(『シュレック』)のキスもOKなのに、レズビアンのキスだけは不可だとしたら、そっちの方がよっぽど「たわごと」だとあたしは思いますね。ちなみに今回のオリンピックでは、男性の聖火ランナーがボーイフレンドにキスをして、観客から拍手喝采を浴びたりもしています。現実を正直に、かつ誠実に描いたら、同性カップルが1組も出て来ない方が変なんです。ダニー・ボイルの英断に、心から拍手を贈りたいと思います。