英広告基準局、「レズビアン・キス」広告への抗議を退ける

英国の百貨店ハーヴェイ・ニコルズが女性同士のキスシーンをあしらったポスターを使ったことに対し、英国広告基準局(Advertising Standards Authority, ASA)に複数の抗議が寄せられたそうです。しかしながら2013年2月27日、広告基準局は、これらの抗議を支持しないと表明したとのこと。

ハーヴェイ・ニコルズのこのポスターとは、女性が自分自身の鏡像にキスしようとしている写真に「汝自身を愛せ(LOVE THYSELF)」というキャッチコピーを添えたもの。2012年の後半に、リバプールで使われたとのことです。

これについて英国広告基準局に寄せられた苦情が17件。うち9件が、この写真が「レズビアンのキス」を示しているために「不快で、無責任で、不適切」だというもの。苦情を申し立てた人のうち10人が「性的に露骨である」と主張し、2人が「汝自身を愛せ」という語を使ったのが宗教的見地から見て不快だと言ってきたそうです。

もうこの時点で既に言ってることがおかしいと思うんですけどね。世の中には男女同士のキスやいちゃいちゃをあしらった広告写真が山ほどあるのに、その組み合わせが女性同士になっただけで「性的に露骨」? それって、「自分は女同士のキスを見ると露骨な性的興奮をおぼえてしまう」という、単なる個人の事情の話なんじゃないの。あと、聖書には殺人も売春も奴隷制も近親相姦も出てくるっていうのに、人が平和にキスしてるポスターに聖書っぽい言い回しが使われただけで文句を言う意味がわかりません。

ハーヴェイ・ニコルズはこれらの苦情に対し、あの広告はひとりの女性が鏡に映った自分にキスしている場面だと説明しています。さらに、仮にふたりの女性がキスする場面だったとしても、レズビアンの画像は不快でも不適切でもないとも言っているそうです。

広告基準局は、このポスターに寄せられた苦情を支持しないとし、以下のように述べています。

レズビアン・キスの描写であると受け取ったものを不快に思う人もいるかもしれないということは認めたが、当局は、広告で同性愛に言及すること自体が一般的な、または深刻な侮辱を引き起こしたり、あるいは広告を無責任なものとしたりはしないと考えた」
“Although we recognised that some people might have found what they perceived to be a portrayal of a lesbian kiss distasteful, we considered that a reference to homosexuality in an ad would be unlikely in itself to cause widespread or serious offence or constitute irresponsible advertising.”

百貨店も広告基準局も、「鏡が相手なんだからいいじゃん」というところにとどまらず、たとえレズビアン同士のキス写真でもオフェンシブではないと言い切っているところがすごいわ。この毅然とした対応に、心からの拍手を贈りたいです。