「妊娠した男性(pregnant man)」ことFTMトランスのThomas Beatie氏、第2子を懐妊

昨年女児を出産したことで有名になったFTMトランスのThomas Beatie氏が、新たに第2子を身ごもったというニュース。

Beatieさんは女性として生まれた後に性別適合手術を受け、法的にも男性となって女性と結婚している人です。妻のNancyさんが過去に子宮摘出手術を受けていて妊娠できない体であった一方、Beatieさんの方は女性器が残してあったため、彼は2008年に人工授精で子供を産みました。彼はこのように述べています。


不妊手術は性別変更の必要条件ではありません。だから私は胸の再建手術とテストステロン療法を受けても、私のリプロダクティヴ・ライツは残しておきました」

“Sterilisation is not a requirement for sex reassignment, so I decided to have chest reconstruction and testosterone therapy but kept my reproductive rights,”


「血のつながった子供が欲しいというのは、『男性』でも『女性』でもなく『人間』の願いです」

“Wanting to have a biological child is neither a male nor female desire but a human desire.”

とりあえず血のつながった子供を持ちたくない「人間」もいるということはさておき、本人やパートナーが妊娠出産を望んでいてその通りになったのなら、めでたいことだと思います。「女」でなければ子供を産んではいけないなんて決まりはどこにも存在しませんしね。

ところがこの妊娠に対して、口さがないことを言う人もいるんだな。こちらの記事によると、アメリカのテレビ番組The Viewウーピー・ゴールドバーグなど4人の女性がホステス役をつとめるトーク・ショウ)の中で、この件についてトランスフォビックな言及がなされていたようです。少し引用してみます。


シェリー、ウーピー、ジョイとエリザベスは、椅子に気楽に座って、トーマスは女性だと断言した。
特にシェリーは、トーマスには膣があるのだから女性だ、と断固として主張した。膣イコール女性なのだと彼女は何度も力強く語った。ウーピーは、トーマスは妊娠能力を残しているから実際にまだ女性であるという点に同意して、シェリーの意見を裏付けし続けた。

Sherrie, Whoopie, Joy and Elizabeth sat there comfortably in their chairs and declared Thomas a woman.
Sherrie in particular was adamant that because Thomas still possessed a vagina that made him a woman. Vagina equals woman, she stated emphatically and repeatedly. Whoopie went on to confirm her statements by agreeing that because Thomas retained the ability to become pregnant, that he was indeed still female.

何これ。
膣イコール女性だなんて、一部の男性が好んで口にする「女は穴だ」みたいな女性蔑視発言とどこが違うんですか。「妊娠能力があれば女」という発想もどうかと思うし、そもそもこういった考え方だと、性別適合手術を受けていない/受けたくないFTMや、乳房切除(乳腺摘出)手術だけを選択したFTMは全員一律で「女」と判断されることになってしまいます。そんな阿呆な。Beatieさんにはぜひ、こんな偏見に負けずに無事2児のパパになってほしいと思います。

単語・語句など

単語・語句 意味
hysterectomy 子宮摘出(術)
vial ガラス製などの小型容器、ガラス瓶
requirement 必要条件
biological 血のつながった
adamant 断固たる、譲らない
emphatically 強硬に、断固として、力強く、徹底的に