映画『セックス・アンド・ザ・シティ』感想

面白かった!

いやあ、面白かった! 大満足! 一部では過激だ過激だと騒がれているようですが、『セックス・アンド・ザ・シティ』ならむしろあれぐらいでないと変でしょう。ていうか、ずいぶんマイルドよ、あれでも。ビッグがただの気弱な好々爺にしか見えなかったり、サマンサがとっかえひっかえ男と寝てなかったりだなんて、TVシリーズのファンからしてみれば皆さんやたらと丸くなっててびっくりよ。こんな映画なのに、エロ要素だけ注目して「いやらしい」とか「過激」とか、ありえねーよと思いました。

特に良かったところはこんな感じ。

  • サマンサ! サマンサ! サマンサ!
    • 今回は「ヤリヤリでないサマンサ」という形容矛盾な立場にいた彼女だけど、ダンテという脇キャラを実にうまく使うことで、彼女の欲望やジレンマがあますところなく表現されていたと思います。なお、冒頭で4人の過去を急ぎ足で振り返る場面で、あのブランコセックスの場面がなかったのがちょっと残念です。
    • スシのシークエンスには爆笑させられました。あの映画の関係者のだれかが、かつてほしのあきのそういう写真を見たことがあるに違いない。
  • ダンテの存在
    • 男性の美しい肉体をあそこまでセクシーかつ美味しそうに撮ってくれるというのは嬉しい限り。ハダカが美しいのは女だけじゃないもんね。
    • 公式解説本でダンテ役の人が「サマンサはダンテと寝たいわけじゃなくて、ダンテになりたいんだ。つまり、ダンテのように奔放な生活を取り戻したいんであって、そういう意味でダンテはサマンサの欲望の象徴なんだ」みたいなことを言ってて、すごく納得しました。そうなのよ、ただのやりたいだけの話じゃないのよ。
  • シャーロットのキャマキャマしさ
    • 4人の中でいちばんオキャマなメンタリティよね、シャーロット。そこが可愛いんだけど。"I curse the day you were born!"とかすげえ笑ったし、「黒」のマーメイドラインのドレス姿もよかった。
  • ウエディングドレス
    • 「ええ? なんでアレ?」と思ったら、伏線だったのねー。
  • お下劣さ
    • スミスのプレゼントの渡し方とか、メキシコでのあのエピソードとか。こういうのにいちいち眉をひそめる人って、『セックス・アンド・ザ・シティ』に何を求めて映画館に足を運んだのか不明。

ただし、TVシリーズ未見の人には不向きかも

正直言って、TVシリーズを全然知らない人にはあまり楽しめないかも、と思うのよこの映画。少なくとも、あのテーマ曲のイントロの「ちゃっちゃっちゃら♪ ちゃっちゃっちゃちゃらちゃら♪」の部分を聴いて心躍る人じゃないと無理かも。この曲、映画の冒頭でも、そして劇中でも実にうまく使われてたけど、そこで、「ああ、これこれー!」とニヤニヤできる人じゃないと「何だかよくわからん、下品なだけの映画」に見えちゃうかも。
たとえばビッグの過去の3度の結婚のうちひとつをぶち壊したのは他ならぬキャリーだとか、ビッグはビッグですごく傲慢で子供っぽくてなおかつマザコンだったりして、ずいぶんキャリーを振り回してきたとか、そういう過去の積み重ねがめちゃくちゃたくさんあるわけですよ。そのへんがわかってないと、キャリーのあの涙の"I knew it! I knew it!"の場面の意味なんかは表層的にしかわからないだろうし、それだと面白さも半減でしょう、たぶん。
あと、TVシリーズ未見だと、RUN D.M.C.をかけながらTVシリーズに登場した衣装でファッションショーをやるところとか、靴のブランドがマノロ・ブラニクなところとかもぜんぜんわかんないと思うんですよ。さらに、年齢によっては、ファッションショーの最中の「マドンナ!」の元ネタからして意味不明でしょう。こういうのがわからなくてもストーリーは追えるけど、やっぱり美味しいところをたくさん取り落としてしまうであろうことは確かかと。
そういう意味では、これはすごく不親切な映画なんですね。でも、これはこれでいいとも思うんですよ。あれだけのボリュームを持つ作品の背景やキャラクタたちを、たったの2時間強でイチから全部説明し切れるはずがありませんし、こういう作り方は当然ありだと思います。

まとめ

結局これはTVシリーズのファンのために作られた「映画版」であって、2008年にもなって今頃「タイトルに『セックス』って入ってるなんて過激」とか「女同士であんな会話は下品」とか言ってる人の方を向いた作品では全然ない、というのがあたしの意見ですな。「3年ROMれ」ならぬ、「6年分(1998 - 2004)のエピソードを全部見てから来やがれ」って話。その思い切りのよさが好きだし、映画自体もよくまとまっててよかったです。「10年間でみんな相応に老けて、結婚する人はして、子供を産む人は産んで、それでも全員、基本的にはぜんぜん変わってないなあ。好きだなあこいつら」というのがあたしの最終的な感想。というわけで、TVシリーズのファンの皆様にはすごーくおすすめです。