映画『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』感想

面白かった! 「冒険活劇かくあるべし」というお手本のような楽しい映画でした。観ながらつくづく思ったんですが、フィクションの中では作り手はどれだけ嘘をついてもいいんですよね。その嘘が、

  • こんなこと絶対ありえねー*1よ! でも、ありえた方が絶対面白い!

と観客に思わせうるものでありさえすれば。この映画はそういう「ありえた方が絶対面白い!」という大嘘ばかりで、気持ちよく騙されまくってスカッと楽しむことができました。エンタテインメントはやっぱりこうでなきゃ。

ちなみに映画を観ながらずっと思い返していたのは、森奈津子さんの小説『先輩と私』の、以下のくだり(pp. 150-151)。

「夜鷹が美女だったり、既婚女性の眉があったりするのは許せるのに、中世ヨーロッパにジャガイモやトマトがあるのは、なんでおかしいって感じるんでしょうね」
「作者が知ったうえでやっているのか、知らなくてミスを犯したかの違いではなかろうか。夜鷹が美女だったり、既婚女性が眉を落としてなかったりするのは、作者や製作者側も承知の嘘だ」
「けれど、中世ヨーロッパのジャガイモやトマトは、無知ゆえの過ち……。なるほど、これは恥ずかしい」
「作者が意図的に時代考証に反したことを書いているのか、あるいは単なるミスなのか、その点は読者にも伝わってしまうと私は思う」

これですよこれ。小説でも映画でも漫画でもそうだと思うんですけど、作り手が意図的についた嘘なのか、単なる知識不足または技量不足によるミスなのかで、観客の騙され具合は天と地ほども変わってしまうと思うんですね。そして『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』は、意図的についたナイスな嘘が炸裂しまくった王道娯楽作品だと思います。こんなに楽しい2時間をありがとう、スピルバーグ。とりあえずこれからDVDでインディ・ジョーンズ1〜3を見返して「ひとりインディ祭り」を開催したいと思います。特にあの人の活躍をもう1回見なければ!

*1:そう言えば一部アメリカ人のどうしようもない能天気さが露呈してしまっている部分はあり、そこはさすがに引きました。ただしこのシリーズの非白人に対する鈍感さは『魔宮の伝説』以来の伝統だから、今さら気にしやしませんが。