世間の認識って、いまだに「レズビアン＝女囚さそり＝刑務所で女をレイプする」なんだろうか
今朝TV番組「スッキリ！！」を見ていたら、パリス・ヒルトンの収監にあたり、町山智浩氏がこのようなコメントをしておられました。（録画していたわけではなく、記憶に頼って書いています。間違いがあったらどなたか掲示板でご指摘くださると幸いです）
ウィノナ・ライダーはレズビアンに人気がある。刑務所にもレズビアンがいるから、そこにウィノナを入れたら狙われて可哀想だと検察が判断して、だからウィノナは刑務所行きを免れたのではないか朝からすげー脱力しました。以下、脱力した理由。
1. ウィノナは「レズビアンに狙われると可哀想だから」刑務所行きを免れたの？
『女囚さそり』じゃあるまいし、いまどきそんな「刑務所＝セックスに飢えたレズがいる＝レズ好みの女は襲われる！」みたいな決めつけを、それも裁判の結果を左右する事実であるかのごとく語られてもなあ、というのが正直な感想です。
いや、町山氏ご自身がそう決めつけているわけではなくて、アメリカ人のクソノンケが無責任に流している風評をそのまま日本語化して喋っておられただけなのかもしれませんが、それにしてもひどすぎます。いらん偏見を助長するような根も葉もない思い込みを、わざわざ大々的にテレビで流されるのは、ただでさえノンケから誤解されがちな同性愛者にとっては大迷惑だからです。
ちなみにウィノナ・ライダーの裁判については、ちょこっと検索するだけでこんなページが見つかります。
膨大な資料がありますが、いったいこれのどこに「レズが待ち受けている刑務所に入れたら可哀想だから、刑務所には入れないでおいてやる」なんて記述があるんでしょうか。判決前のCNNの報道でも、「この罪状だと執行猶予から懲役3年までの間の刑罰となるが、ウィノナには前科がないから寛容な判決となるかもしれない」という趣旨のことが書かれており、こちらの方がよっぽど真相に近そうです。
だいたい、もし裁判の場で「レズに襲われたら可哀想だから」刑務所に入らなくていいなんて理屈が通るなら、
なんてことになってしまうと思うんですけど。さらに、ことはセクシュアリティだけではなく、
- 犯罪を犯した警官は「警察に恨みを持つ犯罪者に暴力をふるわれたら可哀想だから」刑務所に入らなくていい
って理屈も成り立ちますよね。そんなバカな。それじゃ、司法なんてまったく機能しなくなってしまいます。
2. 問題は、セクシュアリティと性暴力を混同すること
あるセクシュアリティを持つことが、即、誰かに性暴力を振るうことには結びつかないはずなのに、どうしてレズビアンというと即「女性に性暴力をふるう存在」にされてしまうんでしょう。それってノンケ好みのレズポルノの神話じゃないの？ つか、異性と見ればすぐ「強姦したい」みたいな身勝手な欲望を抱くノンケ（もちろん、ノンケが皆そうであるはずはありませんが）が、自分の欲望をレズビアン全体に投影してるだけなんじゃないの？
既にこちらのエントリでも少し書いたように、確かにレズビアンによるレイプ事件は存在します。しかしそれは、「ノンケによるレイプ事件は存在するが、だからといってノンケが皆欲望のままに身勝手にふるまうわけではない」ということと何ら変わりません。異性愛者でないというだけでいちいち変な想像ばっかりされて、「レズビアンは皆、好みのタイプの女に襲いかかるのだ！」みたいな偏見を再生産されていくのは、もううんざりだわ。
3. もうひとつ、町山発言の滑稽な点
ウィノナ・ライダーの話の後、氏はこんなことをおっしゃっていました。
マーサ・スチュワートは脱税で収監されたが、刑務所の中でたいへん真面目につとめ、他の囚人から信頼されて手編みのセーターをもらったらしいええと、実はマーサ・スチュワートもレズビアンに結構人気があるんですけど？ これだと氏の「ウィノナ、レズに狙われて可哀想だから保護観察で済んだ説」はまったく成り立たなくなってしまうのに、なんでここでマーサの話なんて出されたんでしょう。ノンケ目線の風評ばかりリポートしてないで、町山氏は一度Suzanne Westenhoeferの一連のマーサ・スチュワートに関するギャグでもお聞きになったほうがいいと思います。
