『ダメな議論』(飯田泰之、ちくま新書)感想
ダメな議論―論理思考で見抜く 飯田 泰之 筑摩書房 2006-11 売り上げランキング : 58 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ダメな議論に「気づく」ための5つのチェックポイント
- 定義の誤解・失敗はないか
- 例:「超能力」の定義を明らかにしないまま「超能力は存在するか」を論じても無意味
- 超能力を「物理学の法則に反する現象を人為的に引き起こす力」と定義するならば、存在の証明は非常に困難
- 超能力を「既存の物理学では説明できない現象を起こす力」と定義するならば、論理的には存在してもおかしくない可能性がある
- 定義しないままなんとなく論じても、有用な結論は得られない
- 例:「超能力」の定義を明らかにしないまま「超能力は存在するか」を論じても無意味
- 無内容または反証不可能な言説
- 難解な理論の不安定な結論
- 新しい理論や難解な理論が、無条件で全ての状況を説明できるわけではない
- 理論の前提部分がぼかされている場合、その書き手が理論の適用可能性に自信がないと解釈できる
- 単純なデータ観察で否定されないか
- 例:「近年、日本の少年犯罪は増加した」という主張
- 警察庁刑事局刑事企画課「犯罪統計書」のデータによって簡単に否定されてしまう
- 例:「近年、日本の少年犯罪は増加した」という主張
- 比喩と例話に支えられた主張
- 例:「ある産業は通産省の保護のおかげで成長した」という例話をもとにして、「だから官僚による経済指導は有効である」とする主張
- 官庁の指導や保護を受けても成長しなかった産業はある。逆に、官庁に敵視されつも成長した産業もある
- 例:「ある産業は通産省の保護のおかげで成長した」という例話をもとにして、「だから官僚による経済指導は有効である」とする主張
これらのチェックポイントは「無内容な主張」や「明らかに間違っている言説」を見抜く手段として非常に有効だと思います。これを使って現政権の「美しい国」発言を見直してみたりすると大変面白いですね。明確な定義もなく、無内容で、反証不可能で、誰も責任をとるつもりがない言説だということがよくわかります。自分の主張が「ダメな議論」に陥らないよう、時々この本を読み返してみたいと思います。