『パーマネント野ばら』(西原理恵子、新潮社)感想

パーマネント野ばらパーマネント野ばら
西原 理恵子

新潮社 2006-09-28
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貧乏な田舎の美容院「パーマネント野ばら」界隈で繰り広げられる女のザンゲ室、または修羅場にまみれた恋模様を描いた漫画です。「『ぼくんち』の世界をおばちゃん達の恋と人生に焦点を当てて描くとこうなるのかも」という感じの濃い内容。育児話*1や絵本*2なんかですっかり守りに入ったふりをしつつ、こういうのをガツンと出してくるサイバラはやはり侮れません。小綺麗な恋愛論をこねくり回しているうちに疲れちゃった若者は、ショック療法でこういうのを読むといいんじゃないでしょうか。
全体的に女の名言てんこもりなので、ちょっと羅列してみます。
(引用者注:『流した涙のかずだけ、人間は大きくなれるんだよ』という言葉を受けて)「その言葉がホンマやったらこの港の女は全員、300メートル以上の巨人になってますがな」
「ちょっと恋て、おかあちゃん、女が、ひからびた芋*3いっこみただけで狂うワケ?」
「せやからあんたはまだまだ子どもやゆうの 恋は交通事故なんよ 芋でも何でも、はねられる時ははねられんのっ」
「私の経験上、顔のええ男は120%バカです」
「こないなおばさんになってなんやそんなバカな話題」
「現実がシャレにならん毎日やから 女子高生並にアホになって切り抜けようとしとるんやんけ」
「大人になってわかったけど 白馬の王子様っておらんもんやったんやねえ」
「あーアレはおらん。さがしゃあどっかにおるもんやと思うとったけど、アレはおらん。ツチノコと一緒や」
(引用者注:キャラクタのひとりが恋におちた、という話を受けて)
「とりあえず相手の年は 職業は性格は? 前科は?」
「関係なしっ 今までつかんだババとほぼ同等という覚悟さえあれば関係なし」
「そーだよなー 恋だもんなー 関係ないよなー 恋だもん」
他にもいろいろあるけど、それは読んでのお楽しみということで。
これまでのサイバラ作品と少し違うのが、主人公が30代ぐらいの女性であることと、主人公には優しくておだやかな「好きな人」がいてくれることだけど、後者が結局ストーリー上の重大な役目を果たしているのが良かったです。少しずつ感じていた謎が最後で一気に解け、それによってラストシーンの台詞がより生きてくる感じ。そんなところもとても面白かったですね。

*1:毎日かあさん』(西原理恵子毎日新聞社)など。

*2:『いけちゃんとぼく』(西原理恵子角川書店)など。

*3:もちろん、食べられる芋のことではありません。