「変わらずこの子を愛しますよ」ウォルマートで息子を守ったお父さんがステキ

『ちいさなプリンセス ソフィア』("Sofia the First")という、ディズニーのTVシリーズをご存知でしょうか。2012年から放映され、7歳の主人公ソフィアが史上初の中南米系プリンセスだということで話題を呼んだ3Dアニメです。絵柄はこんな感じ。

この『ちいさなプリンセス ソフィア』のDVDをめぐり、ある小さな男の子のお父さんが「お父さん・オブ・イヤー」賞ものの活躍をしたことがハフィントン・ポストで報じられています。

詳細は以下。

その日、このお父さんは息子のサムくんと一緒にウォルマートで買い物をしていました。ふたりがレジ待ちの列に並んでいるときに何が起こったか、お父さん本人が以下のように説明しています。


列に並んでいると、横にソフィアのDVDがある。サムは言う。「あ、『ちいさなプリンセス ソフィア』だ……ぼく、『ちいさなプリンセス ソフィア』大好き……これ買っていい?」。わたしは言う、「だめだよサム、DVDならもうたくさんあるから」……本当にそうなのだ。続いてこんな会話が起こる。
軍鶏のマークのポロシャツと編み込みベルトの馬鹿者「それに、ソフィアは女の子向けだからな……坊やは将来ママみたいになりたくないだろう、パパみたいになりたいんだよな」
わたし「実のところ、この子が本来なるはずのものなら何になってもいいとしか思っていないんですが……それがプリンセスものが好きな男の子だとしたら、すばらしいと思います」
馬鹿者「それじゃこの子がおかしな(funny)子になってしまうとは思わんのか」
わたし「面白い(funny)子になってほしいですね、本当に」
馬鹿者「そういう意味じゃないんだよ。この子は男の子が好きかも知れんと言ってるんだ」
わたし「だとしても、変わらずこの子を愛するだけです……もしそうだとしたら、ティーンエイジャーになった頃、体臭が少なそうですし」
馬鹿者は他の列へと移る。
後ろに並んでいたおばあさん「わたしが息子さんにそのDVDを買ってあげる。聞いててスカッとしちゃった」
そんなわけで、サムは『ちいさなプリンセス ソフィア』のDVDを手に入れることになったのだ。
We are in line, and there is display of Sofia DVDs next to the line. Sam says "Oh boy, Sofia the First...I love Sofia the First...can I get this movie?" And I say, "No Sam, we have more than enough movies right now"...which is very true. Then, the following dialogue:
MORON IN GAMECOCK POLO SHIRT AND BRAIDED BELT: ”And those are girl movies...you don't want to grow up like a mommy, you want to grow up to be like daddy."
ME: "Actually, I just want him to grow up to be whatever he is supposed to be...and if that's a boy that likes princess movie then great."
MORON: "You don't think that will make him funny."
ME: "I sure hope so."
MORON: "I don't mean that kind of funny, I mean he might like other boys."
ME: "And I'd love him just as much...and he'd probably smell better as a teenager."
MORON moves to another line.
OLD LADY behind me in line: "Let me buy that movie for him. You just made my day."
And that is how Sam came to own Sofia the First.

ハフィントン・ポストによると、『ちいさなプリンセス ソフィア』は、いろいろ批判もある作品なんだそうです。幼児にプリンセスのステレオタイプを刷り込むとか、古臭いジェンダー規範を売りにしているとか、主人公が中南米系に見えないとか、そういう批判ね。だけど、これが女の子だけのためにつくられた作品かというと、断じてそんなことはないんです。監督のクレイグ・ガーバー(Craig Gerber)本人が、自分や自分の息子さんの経験を生かして『ソフィア』をつくったと説明しているぐらいですから。


『ちいさなプリンセス ソフィア』のことを誰かに話すと、わたしには息子がふたりいて娘はいないということにびっくりされる。しかし、うちの子たちがわたしに教えてくれたことのひとつは、自分と結びつけることができる何かがあるお話は共感を呼ぶということだ。息子たちはふたりとも、ソフィアの話を楽しく聞いて、番組を見るのを楽しみにしている。
When I tell people about Sofia the First, they are surprised I have two boys and no daughters. But that's one of the things my children have taught me -- stories resonate when there's something they can relate to. My sons have both enjoyed hearing the Sofia stories and are looking forward to the show.

あとね、この作品には男の子キャラもいるんです。セドリックっていう悪い魔法使い。

ガーバー監督の息子さんは、このセドリックが大好きなんだって。こういう楽しみ方もあるわけよ。それなのに小さな男の子がこの作品を見ちゃダメなんて、いったい誰に言えるのよ?
もちろん、男の子がセドリックではなくソフィアを大好きだって別にかまわないし、将来プリンセスになりたいと思ったって全然OKなはず。小さい子がアニマルプラネットを見て「ぼく大きくなったらライオンになる」と言ったからと、あわててチャンネルを変える親がいる? いないでしょ。ジェンダーのことに関してだけ、やたらめったら墨塗り教科書みたいに検閲しようとするのはおかしいよ。だいたい、見たものによってゲイに「なる」なんてことはありえないし、もし本当にそんなことがあったとしても、それで何が困るわけ。ゲイはよくないことだなんて、勝手に決めつけてんじゃないわよ。
元記事コメント欄のこちらの意見にすごくうなずかされました。


いつも仰天させられるのだが、世の中には自分の偏見を自慢に思っていて、他の人も同じ偏見を持っているだろうとか、その偏見を披露したとたんみんな共感してくれるだろうとか決めつけている人もいるようだ。
I have always been astonished that some seem so proud of their prejudices that they assume that others already share them or will begin to the moment they announce them.
たぶんね、このポロシャツの男も、悪気があってくちばしをはさんできたわけじゃないと思うのね。たぶん本人の中では、純粋な善意でサムくんにDVDをあきらめさせる手助けをしようとしたつもりなんだと思うの。でも、そこで息をするかのように偏見を披露して、それで共感を得られるもんだと決めてかかっているところが大問題なわけですよ。そこで適当に話を合わせてやったりしなかったお父さんも、「スカッとした」("made my day")とDVDを買ってあげたおばあさんも、どっちもステキだと思いました。元記事やredditでも言われてるけど、このお父さんには「お父さん・オブ・ジ・イヤー」を、おばあさんには「おばあさん・オブ・ジ・イヤー」を贈りたいです。