「ママがふたりいて、いじめられたことはあるかって?」レズビアン・ママを持つエマさん語る

JBpress(日本ビジネスプレス)の同性婚記事がひどい!!!!!!

上記リンク先の、特に後半の文章を読んで、胸糞悪くなりました。何のエビデンスもなしに、思い込みと偏見だけで同性カップルの子育てを中傷する内容だからです。

ならばここで究極のエビデンスを、つまりゲイ・ファミリーで育った人のリアルな意見を見てみましょう。というわけで、ちょうどタイムリーにハフィントン・ポストに掲載されたエマ・タッテンバウム=ファインさんの文章を紹介するよ!!

「ママがふたりいて、いじめられたことはあるかって? ふたつの子宮の物語」by エマ・タッテンバウム=ファイン

この記事を書かれたのは、レズビアンのママたちに育てられたエマ・タッテンバウム=ファインさん。エマさんもやっぱり聞かれるんだそうですよ、二人のママがいたら、子ども時代にいじめられたんじゃないかって。でも、エマさんが言うには、「完全ノーガードでいじめに遭ったのは、マンハッタンからコネティカット郊外のウエスト・ハートフォードに転校した小学1年生のときだけ」だったんですって。

それまでは、つまりニューヨークでは、ママやパパがふたりいる子はぜんぜん珍しくなかったんだそうです。だから新しい学校でも、幼稚園前からずっとやってきたように、「わたしはエマです。ママがふたりいます」と自己紹介したんだって。

そしたら案の定というべきかクソガキがひとり近づいてきて、こんなことになったとのこと。


「それじゃあさ」と彼はにやにやした……そして、突然ニューヨークがはるか遠くに思えた……
「おまえの半分がひとりのママから出てきて、もう半分がもうひとりのママから出てきたのかよ?」それから彼は声を立てて笑った。
わたしは気持ちが悪くなった。この田舎者のバカ野郎はいったい誰だ、科学も、論理も、リスペクトもなく、わたしが率直に言ったことをひったくって敵意をこめて投げ返してくるやつは誰なんだ。今になって思い返してみれば、この子は6歳で、ウエスト・ハートフォードはかなり洗練された町だった。でもその時点では、わたしは頭にきて、傷ついていた。新しい学校での最初の日で、他の子たちはみんなわたしより読むのが上手なのに、心の知能指数は故郷の友だちの10パーセントぐらいしかなさそうなのだ。

"So," he smirked... and New York felt suddenly far away...
"Did half of you come out of one mom and the other half come out the other?" And then he laughed.
And I felt sick. Who was this little provincial shit who, using no science, logic, or respect, took my openness and flung it back at me? In retrospect, he was six-years-old and West Hartford was a pretty sophisticated town. In not retrospect, I was mad and hurt and it was my first day in a new school where all the kids read better, but seemed to have about 10 percent of the emotional intelligence of my friends back home.

かわいそうに。読んでいるこちらの胸が痛くなりますが、エマさんがすごいのは、怒りと悲しみの中でも、ちゃんと相手に「科学も、論理も、リスペクトも」ないとわかっていること。自分が悪いからいじめられるのではなく、相手の心の知能指数が「故郷の友だちの10パーセントぐらいしか」ないからだと見抜いていること。

エマさんがさらにすごいのは、ここからです。いわば、「ニューヨークっ子をなめるな!」と啖呵を切る場面で、おばちゃん読んでて涙が出そうでした。


わたしは尋ねるような表情でこの男の子を見ながら立っていた。まるで、農夫に変装して初めて実社会を見た若き日のブッダのように。この子が、誰に向かってものを言っているかわかっていないことはあきらかだった。わたしはテイクアウト料理と、箸と、カリブ人の子守と、ゲイ・プライド・マーチの国からやってきたのだ。初めてしゃべったことばは、「ママ」と、ムー・シュー・ベジタブル(訳注:中華料理の一種)の「ムー・シュー」だったんだ。この子はわたしの仲間じゃない。
その日以来、わたしはいじめられるのをただ待ってなんかいなかった。新たなケースを探して、こっちから運動場を探し回ったのだ。他に混乱してる人は誰? 姿を見せてもらおうじゃないの。
他に、同性愛者は悪い奴らで、しじゅうセックスばかりしている(これ、ありがちな誤解なんだけど)と思ってるのは誰だ?
他に、赤ちゃんがどこから来るか知らないのは誰だ?
I stood looking quizzically at this boy, like the young Buddha encountering the real world disguised as a peasant. Obviously this boy didn't know whom he was addressing. I had come from a land of take-out and chopsticks, Caribbean nannies, and gay pride marches. My first words had been "mommy" and "moo-shu" as in "moo-shu vegetables." This child was not of my people.
From that day on, I didn't wait for teasing to come at me. I went out scouring the playground for new cases: Who else was confused? Let him show himself to me.
Who else thought gay people were bad and did nothing but have sex all the time (a frequent misconception)?
Who else didn't know where babies came from?

要するに、「わかってないやつはいねがー」と自らとっつかまえて話して回ったってわけですよ。偉い。エマさん本人の聡明さや勇気もさることながら、親御さんの教育もよかったんだろうなあ。

で、この、「ニューヨーク生まれゲイ家庭育ち、わかってない奴にゃナマハゲ作戦」(と勝手に命名)がどうなったのかというと。ほんの数ヵ月で、他の子たちの方から、エマさんにいろんなアドバイスをしてもらいに来るようになったんだそうです。カエデの木の下のベンチにエマさんが座っていると話したい子がやってくるというシステムが確立され、時にはアドバイスして欲しがる子が多すぎて、雲梯で遊びながら待っててもらわなければならないこともあったとか。つまり、エマさんはみんなに好かれ、信頼され、意見を求められるリーダーになったんです。

最後のパラグラフが痛快なので、全文訳すよ!


わたしにとって他の小さな子たちをリードしたり、仕切ったり、何か教えたり、面白がらせたり、追い払ったり、大いに喜ばせたり、言いくるめたり、味方を集めたり、話を聞いてあげたりするのはごく自然なことだった。いじめというのは、これから子どもを持つゲイペアレンツには大きな恐怖だと思うけれど、そのいじめこそがわたしの中のこうした情熱に火をつけ、このようなスキルを磨かせたのだ。大学ではこんなことは学べない。もしもうちょっと多くいじめられていたら、わたしは今ごろ大統領にでもなっていたかもね。
It was very natural for me to lead, to boss, to educate, to amuse, to dispel, to charm, to cajole, to gather allies, and to listen to other little people. Teasing, which I think is the great fear for future gay parents, ignited those passions in me and prompted me to hone those skills. They don't teach that in college. Maybe I'd be president by now if I'd been teased a little more.

JBpress(日本ビジネスプレス)の記事の話に戻ります。

このエントリの最上部にリンクを貼った、JBpress(日本ビジネスプレス)の記事を書かれた「川口マーン惠美」さんとやら。このエマさんのお話こそが、同性カップルに育てられた子どものナマの声です。「幼い彼らには、自分の置かれた状況を相対的に見る能力はない。もちろん、批判的に見る能力もない。」とあなたは書きましたが、6歳児だって、自分の置かれた状況をここまで正確に把握し、かつ、いじめっ子の非論理的なあざけりを批判的にとらえる力を持っていますよ。

お母さんが2人といった環境で育った子供は、どこか倒錯してしまう」とも、あなたは書きました。このエントリで紹介したエマさんのどこが「倒錯」しているとあなたはおっしゃるのでしょう。何だったら、他にもお母さんが2人いる子の例を挙げましょうか? ウェールズ大臣あてに「わたしはふたりのママにかんぺきにそだてられています」と手紙を書いた8歳児のエリザベスちゃんはどうですか。手紙の全文を当サイトで訳していますから、どこがどう倒錯の徴候なのかご指摘くださいな。あるいは、『My Two Moms: Lessons of Love, Strength, and What Makes a Family』の著者、ザック・ウォルス氏はどうです? 彼の本ぐらいは読みましたか? せめて、このスピーチを見ましたか?

他にもいくらでも例はあげられます。NBAのスター選手、ケネス・ファリードはどうです? MLB投手のジョー・バレンタインは? 
そもそも、川口マーン氏のおっしゃる「倒錯」の定義もよくわかりません。ひょっとしたら、同性愛者に育てられたら同性愛者になってしまうとでもおっしゃりたいのでしょうか。しかし、同性愛を倒錯とするのは19世紀の発想で、現代では国際精神医学会もWHOもそのような見方は採用していません。また、カナダのケベック州がおこなっている、アンチ・ホモフォビア・キャンペーンのWebサイトにはこうありますよ。


ほとんどの同性愛者の親は異性愛者です。研究によって、同性カップルの子どもたちが、異性愛者のカップルの子どもたちよりも同性愛者になりやすいということはないと示されています。
Most homosexuals have heterosexual parents. Research shows that children of same-sex couples are no more likely than children of heterosexual couples to be gay or to experience sexual identity issues.

というわけで、川口マーン惠美さん。あなたは、根拠なき思い込みだけをたよりに、この子たちの名誉を傷つけ、家族を侮辱しているのですよ。そう思うこと自体が間違いだと言われそうだが、そう思うのだから仕方がない」なんて開き直りは、何の言い訳にもなりません。恥を知りなさい。今のあなたは、小学校で6歳児から「科学も、論理も、リスペクトもなく、心の知能指数がマンハッタンの子どもたちの10パーセント程度」と看破されたいじめっ子のクソガキと何ら変わりませんよ。そもそも、あなたのような人たちが先入観だけでせっせとゲイ・ファミリーへの不安や不信をあおるからこそ、ゲイ・ペアレンツを持つ子どもたち(エマさん含む)がよけいに苦労するんです。今からでも遅くありませんから、せめてマンハッタンの幼児程度の知識と見識を身につけられてはいかがですか。

川口マーン 惠美 | 著者 | JBpress(日本ビジネスプレス)によると、川口マーン氏は日本大学シュトゥットガルト国立音楽大学大学院を卒業していらっしゃるようですね。一般的に言って、大学院まで出た人なら、アカデミックな論文やましてやそのサマリーぐらい読めるでしょう。ゲイ・ペアレントが子どもにどんな影響を及ぼすかなんてすでにたくさん研究されていて、ネットで結果が読めます。それすら読まずにマイノリティへの誤解やヘイトを煽って終わりだなんて、エゴを何よりも優先させているのは同性愛者じゃなく、アナタですよ。