NHKの『Born This Way』改悪がイスラム教国の検閲よりひどい件について

2011年の紅白歌合戦で、NHKレディー・ガガの「Born This Way」につけた歌詞字幕がずいぶんとひどかったようです。詳細は以下を。

話をLGBT関係にのみ絞って言うと、"No matter gay, straight or bi / Lesbian, transgendered life"の部分を、「性的好みなんてどうでもいい」と訳しちゃったんですねNHKは。セクシュアリティが単なる「好み」であり、「どうでもいい」ことであると大々的に喧伝してしまった(しかもトランスジェンダーはガン無視で!!)わけで、元歌の意味を180度ねじまげる改悪だとあたしは思います。

『Born This Way』のこの部分をわざわざ修正して放送した国ってのは先例がありましてね。イスラム教国のマレーシアがそうです。で、そのマレーシア版修正バージョンとされているものがこちら。

このマレーシア版では、"No matter gay, straight or bi / Lesbian, transgendered life"にあたる部分でスクラッチ風に"No matter, No matter, No matter..."と繰り返され、そこから次の"I'm on the right track baby, I was born this way"という歌詞へとつながっていくように編集されています。これだって随分差別的だとして世界中で話題になったんですよ去年。でも、このマレーシア版では、少なくともLGBTが「好み」の問題で「どうでもいい」ことだなんていう、原曲のメッセージと180度違うイデオロギーの注入はされていません。そこがNHK版と大きく異なるところ。以上をもってして、あたしはNHKによるあの字幕はイスラム教国マレーシアにおける「Born This Way」検閲よりなお悪質だと考えます。

ちなみにNHKの字幕がああなったのは、秒数や字数の都合なんかじゃないらしいですよ。以下、年間最高視聴率を死守も……。“絶対に見過ごせなかった”紅白歌合戦のツッコミどころ - 週プレNEWSより引用。


「もともとの歌詞には『レズビアン』や『バイセクシャル』といった言葉が入っているのですが、紅白でそのまま直訳するのは難しい(苦笑)。だから、ガガ側にも許可を取り、本来の意味を失わない範囲でやんわりとした表現に変更しました」(前出・NHK職員)

何が「(苦笑)」だ。

宗教ならまだ、ある日最高指導者が「LGBTオッケー」と言えば事態は変わるかもしれません*1。でも、漠然とした偏見だけを根拠に公然と行われるこうしたヘイト行為って、いったいどうやって対処したらいいんでしょう。そんなに『レズビアン』や『バイセクシャル』が名前すら放送してはいけない存在だと思い込んでいるのなら、最初からガガ様なんて引っ張ってくるなよ糞が。

*1:いや時間はかかると思いますけどね、ローマ教皇庁なんて1997年にようやく地動説を認めたぐらいですし。