「ロースクールはゲイを排除するクリスチャンサークルを認めなくてよい」米国最高裁が判決

大学はゲイや非クリスチャンを排除するクリスチャンサークルを認めるべきか? 米最高裁、判決へ - みやきち日記の続報です。2010年6月28日、米国連邦最高裁が、ロースクールは同性愛者の学生を排除する学生グループを認可しなくてもよいという判決を下したとのこと。

これまでの経緯について、前回の記事から引用してみます。


米国カリフォルニア大学ヘイスティングスロースクールで、ゲイと非クリスチャンの入会を認めない学生サークルが大学側から公認サークルと認められず、訴訟が最高裁まで持ち込まれたというニュース。
訴えを起こしているのは同大学の「クリスチャン・リーガル・ソサエティ」という学生サークル。このサークルは、会員に宗教についての声明書にサインさせ、誰であれ「男性と女性の婚姻の外にある性的行為を提唱したり、悔悟の念なしにそうした行為に従事する」者は入会禁止なんだそうです。
カリフォルニア大学は、この入会ポリシーは、大学の公認サークルに必要な「人種、肌の色、宗教、出身国、祖先、障害、年齢、性別または性的指向にもとづいて不法な差別をしない」という要件を満たしていないと判断。クリスチャン・リーガル・ソサエティは公認サークルになれませんでした。これはつまり、集会の場所が持てず、活動費も支給されないということです。同サークルはこれを不服として訴訟を起こしたのこと。
第二審では裁判所は大学側を支持したのですが、南イリノイ大学が同様の訴訟を起こされたときには控訴裁判所が宗教グループ側を支持しており、判例の食い違いが波紋を呼んでいる模様です。

最高裁では5対4で大学側の勝訴となりました。

大学側を支持したJustice Ruth Bader Ginsburg陪席裁判官は、


「学校は、憲法修正第1条の基準を満たすために、宗教に基づいた例外を用意する必要はない」
"To meet First Amendment measurement, the school need not provide a religion-based exception,"

と述べているとのこと。一方、宗教サークルを支持したJustice Samuel Alito陪席裁判官は以下のように書いているそうです。


「本日の判決は、この国の表現の自由を深刻に後退させるものであると言っても誇張ではないと思う」
“I do not think it is an exaggeration to say that today’s decision is a serious setback for freedom of expression in this country,”

「ゲイお断り」なポリシーを表現の自由として保護しろというのなら、昔みたいに水飲み場に「白人専用」と書いて黒人を排除するのも「表現の自由」だから認めろってことになってしまうと思うんですけどね。Alito陪席裁判官はそんな社会をお望みなのでしょうか。

むろん、個人の家の中の水飲み場に「白人専用」と大書するのは自由でしょう。私的な領域で「同性愛者お断り」のグループ活動を行うことも。でも、仮にも法の専門家を養成するロースクール(しかも公立校)に向かって、そういう排他的な活動を公式に認めろ、活動費と活動場所も用意しろっていうのは筋が通らないのでは。

あと、宗教を言い訳にするにしても、なぜ「同性愛者」や「婚姻外セックスを行った者(ていうか、同性愛者もここに含まれるんだろうなと思いますが)」をピンポイントで排除しようとするのかがよくわかりません。これについては元記事のコメント欄の意見が面白かったので、以下にざっくり訳しておきます。


私がいらいらしてしまうのは、こうした「クリスチャン」が特定の自由、つまりLGBTを差別し苦しめる自由だけを欲しがるということです。彼らが黒人を差別する許可を求める(聖書によれば、それは許容されることだと『証明』され得るんですけど)ところは見かけないし、姦通者を石打ちの刑で殺すために、殺人を禁じる法律にそむく許可などを求めているところも見かけません。女性や他の人種を迫害する自由が縮小された今、彼らの目下の標的は私たちなんです。
what gets me is that 'christians' only want PARTICULAR freedoms – a big one of which is to be free to discriminate and harrass LGBT people. I don't see them pushing for permission to discriminate against black people (which could be 'proved' as allowed according to the Bible)or permission to disobey the homocide laws so they could stone adulterers to death etc etc. No, their current target, having seen their freedom to persecute women and other races curtailed, is us.
You have to wonder about people who feel such a burning need to victimise others.
下世話なQ&A「キリスト教では同性愛はだめなんですよね?」の以下のくだりをちょっと思い出したりしました。

質問者 「え? キリスト教、同性愛ダメでしょう?」
30番地教会牧師 「いや、そんなことないですよ」
質問者 「だって、いやーやっぱり、同性愛は異常じゃないですか」
30番地教会牧師 「それはあんたがそう感じてるだけで、同性愛者から見たら、あなたが異性が好きなのが異常に見えるはずですよ」
質問者 「聖書に同性愛はいいって書いてあるんですか?」
30番地教会牧師 「いいえ。むしろ『死ね』って書いてあります」
質問者 「じゃあダメなんじゃないですか、やっぱり」
30番地教会牧師 「でも、そんなこと言い出したら、同じ聖書に『反抗的な息子は死ね』って書いてあるんですよ?」
質問者 「そんなー。ムリですよ。人口が半減してしまう」
30番地教会牧師 「じゃあ、あなたも人にムリなこと要求しちゃいけないんじゃないかな」
この「反抗的な息子は死ね」というのは、このあたり(申命記21:18〜21)でしょうか。


もし、わがままで、手に負えない子があって、父の言葉にも、母の言葉にも従わず、父母がこれを懲らしてもきかない時は、その父母はこれを捕えて、その町の門に行き、町の長老たちの前に出し、町の長老たちに言わなければならない、『わたしたちのこの子はわがままで、手に負えません。わたしたちの言葉に従わず、身持ちが悪く、大酒飲みです』。そのとき、町の人は皆、彼を石で撃ち殺し、あなたがたのうちから悪を除き去らなければならない。そうすれば、イスラエルは皆聞いて恐れるであろう。

で、同性愛ダメっていうのは、このへん(レビ記20:13)。


女と寝るように男と寝る者は、ふたりとも憎むべき事をしたので、必ず殺されなければならない。その血は彼らに帰するであろう。

つまり、聖書を字句通りに解釈するのなら、わがままで手に負えない息子も同性愛者も等しく殺されなければならないわけです。でも、「クリスチャン・リーガル・ソサエティ」の皆さんは、なぜか、「反抗的な息子は入会お断り」とはしていません。要するに、宗教を言い訳にして単に自分たちが嫌いな人を追い出したいだけなんじゃないの。大学の反差別ポリシーを曲げてまでこんなサークルに公認を出させるような判決が出なくて、よかったですホント。

単語・語句など

単語・語句 意味
bylaw 会則、内規
persecute 迫害する
curtail (権利など)を奪う