ワルシャワ国立美術館の展示「Ars Homo Erotica」に抗議の声

ワルシャワ国立美術館、同性愛テーマの作品展を開催 - みやきち日記の続報です。

2010年6月11日から始まった同美術館の展示「Ars Homo Erotica」に、やはりというべきか、抗議の声が起こっているとのこと。美術館のスタッフの中にも、この展示の「急進的なバイアス」(と彼らが主張するところのもの)に反対する一団がいるほか、保守派の「法と正義党」(Law and Justice Party)からはさらに怒りに満ちた反応が返ってきているんだそうです。同党のStanislaw Pieta議員は、文化相にあてた手紙で以下のように書いているそうです。


ポーランドの文化相は、このわいせつな展示を禁止すべきである。この展示は納税者のお金の無駄遣いだ。国立美術館は、健全で愛国的な主題に集中するべきだ」
"The Polish culture minister should ban this obscene exhibition, which is a waste of taxpayers' money. The National Museum should focus on wholesome, patriotic topics,"

「同性愛=わいせつ」という発想が、まるで昨今の日本での「BL=過激な性描写」という決めつけみたいで大笑いです。ちなみにThe Art Newspaperによると、この議員というのは、2009年に、“小児性愛アートや獣姦アートが存在しないのと同様に”「同性愛アートも存在しない」と発言した人なんだそうですよ、どうしてこうアンチゲイの人って、同性愛の話となるとすぐペドフィリアや動物性愛の話を持ち出したがるんでしょうかね。よりインパクトの強いものと混同させて自説の重みづけをしようという作戦なんでしょうが、ただの詭弁にしか見えませんよまったく。

幸いなことに、同美術館美術館キュレーターのPawel Leszkowiczさんは、以下のように語っているとのこと。


「アートの世界ではどんなことでもあり得ます。この展示はその証明です」とLeszkowiczは語った。「ポーランド社会では同性愛はいまだ難しい問題ですが、国立美術館においては、同性愛は主要なテーマに、そして美しく、芸術的で、エロティックなテーマに、崇拝の対象たるテーマとなるのです」
"In art, anything can happen and this exhibition testifies to the same fact," said Leszkowicz. "In Polish society homosexuality is still a difficult subject, but at the National Museum it became the central subject, a beautiful, aesthetic and erotic subject, a subject of adoration."

実際、Deutsche Welleには展示物の一部の写真が載っていますが、実際、これがアートじゃなかったら何なのと思います。あと、同美術館Jack Lohman理事のこの言葉にも納得。


「この美術館は国立美術館です。であるからして、それは国民のためのものです。すなわち、この美術館は国民全体のためにあるのであって、国民の一部だけのためのものではないのです」
"This museum is a national museum. And as such it is for the nation - that is, for the whole nation - not just one part of it,"

そう、愛国的云々以前に、まず同性愛者だって国民のうちなわけですよ。そして、納税者のお金がどうこう言うのなら、同性愛者だってもちろん税金を払っているということを思い起こしていただきたいものです。税金は等しくぶんどるくせに、そのお金で異性愛者の方だけを向いた「国立」美術館を運営するのなら、それは詐欺以外の何者でもないわ。

なお、この展示についての詳細は、以下のワルシャワ国立美術館公式ページをどうぞ。

単語・語句など

単語・語句 意味
wholesome 健全