同性カップルの社会保障差別撤廃を訴える動画がYouTube DoGooder Contest最終候補に

「25年連れ添ったパートナーを亡くしたレズビアンの異星人が、社会保障給付を拒否される」というストーリーの動画が、YouTubeの第4回DoGooder Nonprofit Video Awards (DoGooder Contest)最終候補に選ばれたというニュース。

YouTube DoGooder Nonprofit Video Awards(直訳するなら『YouTube善行非営利動画賞』とは、「世界をより良くするために製作された非営利の動画、アニメーション、マッシュアップ」に与えられる賞。オフィシャルサイトはこちらです。→4th Annual YouTube DoGooder Nonprofit Video Awards

レズビアンの異星人が登場するこの動画のタイトルは、「私たちはいったいどんな惑星にいるの?」(What Kind of Planet Are We On?)というもので、実物はこちら。

ストーリーの流れをかいつまんで説明すると、まず、舞台はどこかの異星のお役所です。パートナーを亡くした女性エイリアンの「リタ」が、社会保障の給付手続きに来ています。係官のエイリアンがさまざまな書類を要求し、リタはドキドキしながらも全部完璧に提出していきます。すべての書類が揃い、係官はにっこり笑って「あなたは最大の給付を受ける資格があります」。喜ぶリタ。

でも、次の瞬間、係官は言うんです。「最後にひとつだけ。故人の写真を見せてください」

そこからどうなるかは、見てのお楽しみ。個人的には、特に2:43からの急展開は涙なくして見られません。

動画の最後に流れるクレジットだけざっと訳しておくと、こんな感じです。


残念なことに、社会保障が不平等なのはSFではないのです。これは現実です。そして、間違ったことです。
社会保障費を払い込んでいるすべてのアメリカ人は、給付を受ける資格があります。
私たちには、同性カップルへの経済的差別をやめることができます。

ちなみに今回最終候補に選ばれた16作品のうち、LGBTテーマのものはこれ1本のみだとのこと。優勝作品は一般投票によって決まり、投票の最終締め切りは4月7日だそうです。YouTubeのアカウントを持っている人なら誰でも公式ページから投票できます。

この動画を見終わって以来、リタの、"But we paid it!"(『私たちは社会保障費を納めたのに!』)という一言が耳について離れません。日本でだって、同性カップルはどんなにきちんと年金を納めていても、遺族年金も死亡一時金ももらえませんからね。「日本にはゲイ差別はない」なんて言ってるヘテロの皆さま*1には、じゃあアンタがアタシに遺族年金分だけ金払ってくれるのかと詰め寄ってみたいものです。たぶん後付けで「わざわざそんな生き方を『選んだ』お前が悪い」とか「『次世代を育てない』同性愛者を保護する必要はない」とか見当違い*2の言い訳をくっつけられて終わりだろうとは思うんですが。
「不公平の実態が知られていない」ということと、「不公平そのものが存在しない」ということはまったくの別物だと思うんですよ。そういう意味で、こういう動画が広く注目を浴びるのはとても良いことだと思います。DoGooder Nonprofit Video Awardsを受賞した動画は、YouTubeのホームページに掲載されるのだそうです。この作品が受賞するといいなあ。

*1:ヘテロが全員そういうことを言っているという意味じゃなくて、ヘテロの中にはそういうことを言う人がいるという話ですよ。念のため。

*2:性的指向は本人の好みや意志で「選ぶ」ものとは限りません。また仮に本人が「選んだ」ものだとしても、「なぜパートナーが同性だと社会保障給付が受けられないのか」ということの説明にはなりません。また、アメリカ合衆国の2000年のセンサスでは、女性の同性カップル世帯の33パーセント、男性の同性カップル世帯の22パーセントが、18歳以下の子供が少なくともひとり家にいると報告しているそうです(世の中には人工授精もあれば養子縁組もあり、異性と結婚していたときにもうけた子供をひきとって育てているゲイやレズビアンもいるんですよ)。そんなわけで、同性カップルが次世代再生産に貢献しないというのはまったくの大嘘。それにそもそも異性カップルは子供がいようといまいと社会保障の恩恵に預かれるのですから、子供の有無は理由にならないと思います。