ハワイがシビルユニオンを認める法改正案を可決

2011年2月16日、米国ハワイ州上院で、同性カップルのシビルユニオンを認める法改正案が可決されました。民主党のニール・アバクロンビー(Neil Abercrombie) 知事は10日以内に署名すると表明しており、2012年1月から施行される見通しだとのこと。

詳細は以下。

AFPは、このシビルユニオンを、同性カップルに対して異性の既婚カップルと同じ権利を与えるものであると報じています。
ハワイは1993年に早くも最高裁同性婚を認める判決を出した州です。ところがその5年後、全米初の「結婚防衛」憲法修正条項が可決されたため、結局同性婚は実現しませんでした。シビルユニオンも2010年に一旦議会を通過した後で当時の知事リンダ・リングルが拒否権発動し、実現しないままでした。20年近くにわたる議論を経て、ようやく同性同士のカップルの法的権利が認められたことになります。

さて、ここでわいてくるのが「既婚のカップルと同じ権利が与えられるなら、結婚とシビルユニオンの違いって一体何?」っという疑問です。ためしにThe Difference Between Gay Marriage and Civil Unionsの内容を表にしてみました。

  結婚 シビルユニオン
法益 計1049種類以上の、国レベルの利益および州レベルの法益 300種類以上の、州レベルの法益のみ
税の支払い免除 国税と州税の両方で、所得税共同申告(夫婦の所得を合算して行う申告方法。共稼ぎ世帯の所得税額を軽減することができる)を行うことができる 所得税共同申告が使えるのは州税のみ
医療の決定権 緊急時に医学的意思決定が行える シビルユニオン登録した州でのみ医学的意思決定が行える
贈与 税金と関係なくお互いに贈与を行える 贈与に州税はかからないが、国税は申告する必要がある
遺族手当 パートナーの死後、社会保障(Social Security)または退役軍人給付金の恩恵にあずかることができる 社会保障(Social Security)その他、政府管轄の手当は受け取れない
子供/配偶者のサポート 離婚した場合、配偶者や子供に対する経済的な責任が法で定められている ユニオンを解消した場合、州外では子供や配偶者への手当ては保証も要求もされない
移民の権利 アメリカの国民またはリーガル・レジデント(グリーンカードのある外国人居住者など)は、配偶者や家族の移民の保証人になれる アメリカの国民またはリーガル・レジデントでも、パートナーや家族の移民の保証人になれない

結局、シビルユニオンでは州レベルの権利しか認められないため、連邦政府が管轄する分野の権利はおあずけのままなわけですね。こうして並べて見ると、実質的には「結婚」よりもかなり不自由が多いようです。日本のメディアには、このシビルユニオンを「同性同士の結婚を事実上認める」ものだなんて報道しているところもありますが、それはちょっと違うと思います。それでもともかく、たとえ限定的な権利だけでも認められたのは一歩前進。次にどうするか、そして最終的にどうなるのがもっともよいことなのか、議論を進めていく必要があると思います。