「医学的研究から同性愛者が排除されている」がん研究者が苦言

米国のがん研究者が、「医学的研究の中には、科学的な理由なしに同性愛者を研究対象から排除しているものがある」という苦言を呈しているというニュース。

この意見は2010年3月18日発行の「New England Journal of Medicine」誌に掲載されたもので、執筆者はフォックス・チェイスがんセンター(Fox Chase Cancer Center)所属のBrian Egleston氏、Roland Dunbrack Jr.氏、Michael J. Hall氏の3人。多数の医学的研究で、被験者が「異性との相互的な関係にある人」限定とされていることを問題視する内容だとのこと。

なんでも、男女間のHIV感染についての研究など、被験者をヘテロ限定にする科学的根拠がある研究ならまだしも、

  • 注意欠陥障害の薬の実験
  • 前立腺がん手術後の勃起障害についての研究
  • 糖尿病、うつ病、良性前立腺肥大症などに関連した性機能の研究

など、同性愛者を被験者から排除する理由が不明瞭な研究で、そういった排除が行われているんだそうですよ。

この3人は、がんセンターの臨床試験の被験者名簿を見ていてこの事実に気づいたとのこと。その後政府のデータベースの何千もの研究について抜き取り調査をしたところ、もっとたくさんの例が見つかり、その多くは私企業による研究だったそうです。

ちなみにEgleston氏によると、米国では連邦政府に研究費を求める研究者は、ジェンダー・人種・民族などによって特定の集団を研究から除外する理由を説明する義務があるものの、性的指向によって被験者を除外する理由を説明する必要はないのだそうです。また、研究者は先行研究の基準を「カット&ペースト」する傾向があるため、同じような排除が続いてしまう可能性があるのだとか。

ひと昔前は、医学的研究から女性が排除されていることが問題視されていたと思います。男性の体や健康についてのみ調べて、これが「人間の」健康ですよ、「人間の」体はこうなっていますよと結論づけることが疑問視され、初めて男性と女性の生理学的な違いを念頭においた研究が行われるようになってきたんじゃありませんでしたっけ。
でも、ゲイやレズビアンは、まだ「人間」に含めてもらってないんですね。
意味のない排除が早くなくなってくれるよう祈ります。

単語・語句など

単語・語句 意味
fluke フロック、偶然のできごと、まぐれあたり
self-perpetuating 永続可能な、いつまでもとどまる、無期限に継続しうる
criteria criterion(標準、基準、特徴)の複数形
turn up (略式)(事実など)を発見する、探し出す
oversee 監督する、こっそり[偶然]見る、見渡す、概観する
enrolment 記載、登録、登録簿、登録者名簿
clinical trial 臨床試験
spot check 抜き取り検査、抜き打ち検査