LAの裁判、ネット上でのアンチゲイな脅迫書き込みを「言論の自由によって保護されない」と判断

米国で、15歳の少年のWebサイトがアンチゲイな罵倒と脅迫書き込みで埋め尽くされるという事件がありました。脅迫書き込みを行った同級生は、書き込んだことは認めたものの、冗談だったと主張しているとのこと。上記リンクは、ロスアンジェルスの控訴裁判所が、被害者少年は書き込みを行った同級生を訴えることができると判断したというニュースです。

この判決が出たのは2010年3月15日。判決では、


「お前の……心臓を引きずり出して食わせてやる」「アイスピックで頭をぶちのめしてやる」という脅迫文の暴力的な言い回しは害意を伝えるものであり、言論の自由によって保護されない
violent language of the message - threatening to "rip out your ... heart and feed it to you" and to "pound your head in with an ice pick" - conveyed a harmful intent that is not protected by the right of free speech.
とされたとのこと。

これはカリフォルニア州における、表現の自由とネットいじめの境界をさぐる最初の判例のひとつなんだそうです。今回の判決では、肉体的危害を加えると脅迫するメッセージはたとえ本気でなかったとしても合衆国憲法修正第1条(いわゆる『言論の自由』条項)によって保護されず、訴訟の対象となるとされています。

なお原告のD.C.(本名不詳)さんはLAの高校生で、Webサイトを立ち上げたのは2005年のこと。アルバムの録音や、映画出演などを行った後、芸能活動のプロモーション用に設立したサイトだとのことです。そこへD.C.さんをゲイだと「誤解した」(裁判所の説明)複数の同級生が、彼をあざけったり、性的な興味があるふりをしたり、暴力をふるうと脅迫したりするコメントを投下したとのこと。

D.C.さんはLA警察の勧めに従って高校を退学。一家は転居先を伏せて北カリフォルニアに引っ越し、D.C.さんは6人の同級生とその親をヘイトクライム名誉毀損、精神的苦痛を与えた罪などで訴えました。被告のひとり「R.R.」(本名不詳)が言論の自由を主張していたため、今回の判決が下された模様です。

ちなみにR.R.の弁護士Rex Beaber氏は、州最高裁に上訴すると述べているとのこと。彼の意見では、まともな人なら誰も問題の書き込みを本当の脅迫だとはとらず、今回の判決は憲法修正第1条に害をなすものなんだそうですよ。

いったいいつから「アイスピックで頭をぶちのめしてやる」(pound your head in with an ice pick)というのが「誰も本当の脅迫だとはとらない」ものになったんでしょうね? もちろん、実際の書き込みを全部見てみないことにはわからない部分もありますが、少なくとも警察が退学を勧めたり、一家が引っ越したりというのは、現実に危険性があると判断したからでしょう。それを「冗談のつもりだったんだから言論の自由です」というだけで全部免罪することはできないと思うんですよね。とりあえず、裁判の続報を待ちたいと思います。

単語・語句など

単語・語句 意味
outdo 〜にまさる、〜をしのぐ、〜に打ち勝つ
appeals court 控訴裁判所
defamation 名誉毀損
withdraw 退学する
undisclosed 明らかにされていない、秘密の
undermine 徐々に害する、見地場無、傷つける