オバマ大統領、"Don't ask, don't tell"撤廃を約束するも、各方面から辛辣な評価を受ける


【10月11日 AFP】バラク・オバマ(Barack Obam)米大統領は10日、ワシントンD.C.(Washington D.C.)で開かれた国内最大の同性愛者の権利擁護団体「ヒューマン・ライツ・キャンペーン(Human Rights Campaign)」のイベントで演説し、米軍による同性愛者の入隊規制政策を撤廃することを約束した。
米軍では1993年に、志願者が同性愛者であることを明らかにしない場合に限って入隊を認める政策「Don't ask, don't tell(同性愛公言禁止)」を採用。以来、性的指向を明らかにした1万2000人以上の米軍兵が除隊処分となっている。
オバマ氏は大統領選挙期間中に同性愛者の権利擁護を公約に掲げた。ところが大統領就任後も軍の入隊規制や同性愛者差別をどのようになくしていくのか具体的な計画を明らかにしておらず、活動家から批判されていた。
だが10日の演説で「国に奉仕するため軍への入隊を志願した愛国的な米国市民を罰してはならない。米国が2つの戦争を戦うなか、そのような勇気と自己犠牲を喜んで示す彼らを称賛すべきだ」と述べ、同性愛者の入隊規制政策の撤廃を改めて明言した。

ということで、ここだけ見ると喜ばしそうなニュースなんですが、この演説、LGBTコミュニティからは必ずしも諸手を挙げて歓迎されているわけでもないようで。たとえばSouthern Voice Onlineでは、「オバマのスピーチは『F』(落第)だ」として、以下のように述べられています。


オバマ大統領が今夜行った同性愛者の権利についての演説は落第だ。これは政策演説というより、かたずをのんで立っている聴衆に向かって、選挙運動のときの古い約束を温め直したものを繰り返しただけだ。演説を聴きに行かずに家にいてよかったよ。
President Obama gets an "F" for his speech tonight on gay rights. This wasn't so much a policy speech as a recitation of old campaign promises reheated for a breathless audience on its feet. I'm glad I skipped it and stayed home.

もう少し詳しく言うと、

  • 相変わらずかけ声だけで具体的な実施計画案がないこと
  • オバマ大統領が同性婚に賛成でなく、この演説でもメイン州での同性婚の可否を問う住民投票についてまったく言及しなかったこと
  • オバマが支持しているEmployment Non-Discrimination Act(『雇用における反差別法』)でさえなかなか進展していないこと

などが「落第」の理由だとのこと。

Box Turtle Bulletinも、「オバマ候補、HRCで演説」(Candidate Obama Addresses HRC)とシニカルなタイトルのエントリを上げています。大統領ではなく「候補」と呼んでみせるところがポイント。LGBTへの約束がなかなか果たされないまま、選挙運動中に聞いたような話が繰り返されているだけという皮肉なわけです。

ちなみにHRCのJoe Solmonese会長がこの演説を歓迎し、「2017年までには選挙運動中の約束が果たされるだろう(要約)」なんて呑気なことをEメール(全文)で述べたことも批判の的になっている模様。The Daily Dishは、このメールを「HRCのバタード・ワイフ・シンドローム(夫から暴力を受けている妻症候群)」と呼んで、以下のように述べています。


彼らはクリントンに対してしたのと同じことをしている。長い長い目で見れば親切にしてくれるだろうという希望のもとに、民主党に対して重荷となっていることを詫び、ひれ伏すということだ。そして、連邦レベルではほとんどすべてのことが議会で決まるのだから、2017年は言うまでもなく、2010年以降にオバマが公約を果たせるかさえ何の保証もない。またオバマが2012年に再選されるという保証もない。
They are doing what they did with the Clintons: essentially apologize for being a burden and prostrate ourselves to the Democratic party in the hope that they will be kind to us in the very, very long run. And since at a federal level, almost everything is a Congressional act, there's absolutely no guarantee that Obama will even be able to fulfill any pledges past 2010, let alone 2017. And there's no guarantee that he will be re-elected in 2012.


このメール全体が、まるで暴力夫を弁護する被虐待妻を見るかのようだ。このメールは自尊心に欠けている。期待が持てないことによる自己嫌悪でぼろぼろになっている。
The entire email reads like a battered wife's defense of her husband. It is without self-respect; it is riddled with the self-loathing of low expectations.

で、このエントリに対するTopix.comでのコメントがまた面白いんですよ。


古いジョークみたいだ……

「暴力をふるう夫と別れてまた別の暴力男と一緒になった妻が、なぜと聞かれて答えた。『だってこの人は、最初の亭主ほど私を殴らないから』」

It's like the old joke....

When asked why she is staying with her second husband who abuses her, after leaving the first, the woman replies "yeah but he beats me less".

本当にねえ。オバマ大統領が、「ブッシュほどはLGBTを殴らない」だけで終わるのか、それとも本当に口で言うほどLGBTの味方になってくれるのか、注意深く見守って行かねばと思います。

ちなみにオバマ大統領のスピーチ全文は以下で読むことができます。ご興味がおありの方はぜひどうぞ。