フランスのイスラム系サッカーチーム、同性愛者との対戦拒否→リーグ事務総長「懲戒処分か、リーグ追放もあり得る」→慌てて「誤解を解く」と言い出し対戦を承諾

ことの起こりはこちら。


[パリ 6日 ロイター] フランスのアマチュアサッカーのイスラム系のチームが、同性愛者の権利を訴えるチームとの対戦を拒否し、波紋が広がっている。
イスラム系チームのThe Creteil Bebel Muslimは、宗教的信条に反するとして、週末に予定されていたParis Foot Gay(PFG)との対戦を拒否。一方、同性愛者の選手が複数プレーするPFGは、Creteil Bebelを訴える構えを見せている。
(引用者中略)
Creteil Bebel側は、スポーツの試合よりも宗教的信念の方が重要だと主張。チームの幹部の1人、ザヒール・ベルガルビ氏は地元ラジオ局に「イスラム教徒として、考え方を共有できない同性愛者とは試合をしない権利を持っている」と語った。

あたしが観測している範囲では、今のところ日本語メディアでの報道はここまで。ロイターの上記記事によると、Bebelが対戦拒否した段階で人権団体などがPFGの味方にまわり、パリ市当局も「あらゆる差別的行為には今後も断固とした態度で対応していく」と声明を出したとのこと。でも、今ざっと検索してみた限りでは、この報道に対する日本国内の反応は、「アッー」だの(同性愛関係の話題のたびこう書いて喜ぶ人って、何が面白いと思ってるんだろう)「誰だって掘られるのは嫌だよね」だの(なんでサッカーで掘るの掘られるのって話になるの?)というホモフォビックなコメントが目立つばかりで、うんざりさせられました。

Muslim footballers agree to play gay team | World Breaking News | News.com.auによると、その後リーグのJacques Stouvenel 事務総長が状況把握のために両チームを召喚し、Bebelに対しては懲戒処分か、リーグ追放さえもあり得ると警告したとのこと。それを受けて、10月10日、Bebelの幹事ベルガルビ氏が、「誤解があった」「真実を取り戻し、分別にもとづいて万事を解決する」と称して声明文を発表し、対戦拒否を撤回したようです。以下、引用。


「わたしたちがそう非難されているように、ホモフォビアにもとづいて対戦を拒否したのではない。単に対戦相手の名前(PFG)がわたしたちのスポーツについての考え方とは食い違っているように思えたためだ」とベルガルビ氏は発言し、氏のチームははサッカーに民族的な、あるいは宗教的な偏向があってはならないと考えていると述べた。
"We had rejected playing this match not on the grounds of homophobia, as we have been accused of doing, but simply because the name of the club (PFG) did not seem to us to reflect our vision of sport, " said Mr Belgharbi, saying his club believed no ethnic or religious slant should be placed on footballing matters.

なんだかなあ。一旦「スポーツの試合よりも宗教的信念の方が重要」とまで言い切った以上(しかも、試合前日になってメール1本で対戦をドタキャンしたんですよこのチーム)、リーグ脱退も辞さず堂々と信念とやらを貫いていればいいのに。

あと思ったんですけど、フランスのリーグ内で戦う以上、対戦相手には当然カトリックだっているわけでしょう。そこでカトリック教徒と戦うことは良くてもゲイと戦うのは拒否(いくら後から撤回したにしても、です)というのが偏向やホモフォビアではないと言われてもなあ。「アッー」とか「掘られる」とか言って騒いでる日本のホモフォーブたちとどこがどう違うのか、あたしにはよくわかんないわ。

ちなみにPFGは別に「同性愛者の」チームというわけではなく、あくまで「同性愛者の権利を訴える」チームである模様。PFGのPascal Brethes幹事は、このチームはあらゆる人種にとって安全な場所であり、ゲイでない選手も歓迎だと言っているそうです。

単語・語句など

単語・語句 意味
good sense 分別
instrumentation 手段、方便、仲介、媒介
slant 偏向
cry off …を取り消す(cancel)