睡眠不足が肥満を招く3つの理由

『眠れないあなたに 睡眠科による不眠の医療』(塩見利明、毎日新聞社)によると、睡眠不足は以下の3点において肥満と深い関係にあるらしいです。

  1. 睡眠不足だとレプチンとグレリンの分泌量が変化し、食欲が増す
  2. 深夜まで起きていると、夜食をとる機会が増える
  3. 寝入りの3時間の眠りが浅くなると、脂肪がたまりやすくなる

2については説明不要だと思います。1と3について同書pp. 52 - 53の内容をざっとまとめてみると、まず「レプチン」は脂肪組織でつくられるホルモンで、食欲を抑えるはたらきがあります。かたや「グレリン」は胃でつくられるホルモンで、食欲を増進させるはたらきがあります。睡眠不足だとレプチンの分泌量が減り、グレリンの分泌量が増えるため、食欲旺盛になって太るのだそうです。
次に、寝入りの3時間の眠りについては、これが浅くなる(深いノンレム睡眠がとれない)と、「脂肪を分解しやすい成長ホルモンの分泌量が減ってしまったり、コルチゾールというストレスホルモンがインシュリンの分泌を促して脂肪が溜まりやすくなる」とのこと。

バスケ選手に1日10時間寝させるとスプリント走が速くなり、シュートの正確性も向上するという指摘から考え合わせても、とにかく人は夜しっかり寝た方がいいってことですね。

蛇足ですがこの本、一般向けの医学本という枠を越えて、単なる読み物としてもたいへん面白かったです。筆者であるDr.塩見が「人の安静とは何か」を知るために座禅を研究しようとして間違って天台宗のお寺に行ってしまい、常行三昧について延々と語られる(p. 21)くだりなんて最高。愛知医大に全国初の「睡眠科」を設置したお医者さんでありながら、「実は眠るのが好きじゃない。むしろ、嫌いだといってもよいでしょう」「なぜ眠らなければいけないのか、子どもの頃から疑問でした」などといきなり書いてしまう(p. 16)あたりも楽しいです。単に「睡眠とは」「不眠治療とは」という客観的事実を並べて終わりの本ではなく、Dr.塩見自身の身体を通した実感や熱情や困惑がずんずん伝わってくる文章なんですよ。いいもん読みました。

眠れないあなたに 睡眠科による不眠の医療眠れないあなたに 睡眠科による不眠の医療
塩見 利明

毎日新聞社 2011-07-09
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