「セクシュアルマイノリティを正しく理解する週間」公式サイトがオープン

2010年5月16日(日)〜23日(日)は、内閣府子ども若者・子育て施策総合推進室、法務省人権擁護局が後援する「セクシュアルマイノリティを正しく理解する週間」なんだそうです。で、上記がその公式サイト。

以下、上記サイトのAboutページから引用します。


セクシュアルマイノリティ(同性愛者や性同一性障がい)は、人口の3〜5%いると考えられていますが、その多くが中学・高校という思春期に、からだの性とこころの性が一致しないことや、自分の性的指向について戸惑い、悩みを経験します。しかし、一般社会はセクシュアルマイノリティに対する偏見や差別があり、多くの人たちは誰にも相談ができず独りで悩んでいます。そして、からだの性とこころの性が一致しない性同一性障がいの人や、同性を恋愛の対象とする同性愛の人たちは自らの性に困惑し、周囲への違和感と孤独感を強めていきます。孤立感が強い人ほど自尊感情が低く、抑うつ割合が明らかに高率であるという調査結果もでています。
性同一性障がいや同性愛など、セクシュアルマイノリティに関する正確な情報を普及させ、当事者の声を広く集めるため、「セクシュアルマイノリティを正しく理解する週間」を実施することとなりました。

この週間に具体的に何が行われるかについては、イベント情報のページに詳しいです。5月17日(月)〜19日(水)の「セクシュアルマイノリティホットライン」や、5月21日(金)の明治学院大での記念シンポジウムをはじめとして、全国各地で多数の賛同イベント(電話相談、茶話会、学習会、デザイン展などいろいろ)が開催される模様です。

よい試みだと思いますし、前例のないこうした企画を実現させた主催者さんには心からの拍手を送りたいと思います。

ただ、個人的には、セクシュアルマイノリティを「正しく理解する」という言い回しにはいささかひっかかりを覚えないでもありません。誰から見た『正しさ』なのか不明*1ですし、そもそも『正しい』『正しくない』の二分法によって痛めつけられてきた*2のがセクシュアルマイノリティですから、いちレズビアンとしては、こうした言い回しには反射的に警戒心を抱いてしまいます*3。また、


セクシュアルマイノリティ(同性愛者や性同一性障がい)
という言い切りにも疑問を感じました。この表現では、まるで同性愛者とGID当事者だけがセクシュアルマイノリティであるかのようです*4。「正しく理解」するためのイベントが、自ら性的マイノリティの多様さを切り捨ててどうするのでしょう。

……と思ったら、twitterでは既にこの催しについて活発な議論が行われているようです。さまざまな立場からの発言がなされており、共感できる意見がたくさんありました。Aboutページの説明によると、この週間は「当事者の声を広く集めるため」のものでもあるそうですから、こうした声を多くくみ上げ、次につなげて行ってくださると嬉しいです。

最後にもう一度強調しておきますが、あたしはこのイベントの趣旨そのものには賛同しますし、このような催事の開催にこぎつけた主催者さん、そして協賛している皆さま方を深く尊敬するものです。たくさんの人が参加して、この週間が有意義なものとなることを願っています。

*1:たとえばウエストボロ・バプティスト教会なら「神はオカマを憎んでいる("God Hates Fags"、アンチゲイで有名なこの教会のスローガン)というのが『正しい理解』だ!」って言うと思うの。判断主体の不明確な「正しさ」は怖いですよ。

*2:「生殖につながらない性は『正しくない』」とかね。他にも「男に生まれたのに女の服を着るのは『正しくない』」とか、「恋愛やセックスに興味がないのは『正しくない』」とかいろいろ。

*3:ていうかあたし、「自分はセクシュアルマイノリティを『正しく理解』しています!」って言い切る人に出くわしたらダッシュで逃げると思う。もっのすごい誤解とかされていそうで、怖いから。

*4:同じページの別の部分ではLBGTIについての説明がありますが、Aセクシュアルノンセクシュアル、クエスチョニングな人、カテゴライズ不能な非ヘテロ等々は相変わらず蚊帳の外です。ありとあらゆる性的少数者を全部リストアップしろとは言わないけれど(そんなこと、不可能ですしね)、「セクシュアルマイノリティを」と大きく出た企画である以上、もう少し説明の仕方に配慮があってもよかったのでは。