同性愛と児童性虐待の間に関係はあるのか? トロント大医学部James Cantor博士の意見
※以下、性的虐待に関する話題を含みます。フラッシュバック注意。
「同性愛とカトリック教会での児童性虐待の間に関係はあるのか」という件について、トロント大学医学部のJames Cantor博士のコメントをまとめた記事です。結論を先に言っておくと、「同性愛のせいで児童性虐待が起こるという説を裏付ける科学的根拠は皆無」だそうですよ。
Cantor博士はトロント大学医学部の教授であり、ペドフィリアの原因についての研究をここ10年間続けているそうです。また、「Sexual Abuse: A Journal of Research and Treatment」誌の編集長でもあるとのこと。
以下、博士のコメントを箇条書きで要約しますが、その前に用語説明を少し。ここで言う「ペドフィリア」(pedophilia)は、思春期前(通例11歳前)の子供を性的に好むことを指します。また、「ヘベフィリア」(hebephilia)は思春期(通例11〜14歳)の子供を性的に好むことを示します。
では、要約をどうぞ。
- 「同性愛が子供への性的暴行を引き起こす」という説に科学的根拠はない
- ペドフィリアやヘベフィリアは、出産前または生まれてすぐの脳の異型性の(atypical)発達によって引き起こされると示す根拠がある
- 性的に子供を好む男性と、大人を好む男性では、脳の白質(脳の各部を性的なイメージへの反応と結びつける部位)に大きな違いがある
- ペドフィリアやヘベフィリアの男性は、そうでない男性にくらべ、脳の白質の密度が低い
- ゲイ男性の白質の密度が低いと示すエヴィデンスはない
- 男女両方の大人と子供の画像を見せてペニスの血流変化を調べる実験(phallometric test)では、ゲイ男性は子供の画像に対し、異性愛者男性(性虐待加害者ではない人)とまったく同じ反応しか示さなかった。つまり、ほとんど反応ゼロだった
- 典型的な男性のうち約2〜3パーセントが、性的に女性より男性を好む
- ペドフィリア/ヘベフィリアの男性の約20〜30パーセントが、性的に少女より少年を好む
- 男性から少年への性的暴行は、この20〜30パーセントのペドフィリア/ヘベフィリア男性によって引き起こされるのであり、ゲイ男性によって引き起こされるのではない
- ペドフィリア/ヘベフィリアは、「やがて典型的なゲイ男性になる人が一時的に少年を好む」というような一過性のものではない
- また、「やがて典型的な異性愛者男性になる者が一時的に少女を好む」というものでもない
- 大人に対する性的嗜好を持つ人に、子供に対する性的嗜好(対象が少女であれ少年であれ)を持たせ得る方法は、まったく発見されていない
そんなわけで、Cantor博士の意見では、科学的には男性同性愛と性虐待を関連づける根拠はないということになる模様です。聖職者による児童性虐待を同性愛のせいにしようとしているバチカンに聞かせてやりたいわ。
他に個人的に面白いと思ったのが、「ペドフィリアやヘベフィリアは、出産前または生まれてすぐに起こった脳の異型性の発達によって引き起こされる」「大人に対する性的嗜好を持つ人に、子供に対する性的嗜好を持たせ得る方法は、まったく発見されていない」という点です。もしもこれらが正しいとしたら、「ロリペドエロ漫画/ゲームのせいで子供に対する性犯罪が増える!」なんて説は非常に怪しいってことになりますよね。機会があれば、このあたりの話題に関する論文とか学術誌とかをいろいろ読んでみたいです。
単語・語句など
単語・語句 | 意味 |
---|---|
puberty | 思春期 |
atypical | 異型性の、異常な、非定型的な |
disproportionate | 不釣り合いな、不均衡な、…より大き[多]すぎる |
immutable | 不変の、不易の |