「『マイノリティ』=『差別対象』」というジャパニーズイングリッシュが気持ち悪い件について

先日書いた「黒ひゲイ危機一発」のことで、STNがマイノリティを名乗ること自体に対する否定的意見を多く目にしました。代表的なものをひとつ挙げてみます。なお、「黒ひゲイ危機一発」についてのあたしの意見はこちら


マイノリティというのは元々「少数派」という意味よね。

差別の多くが社会全体に占める数の少なさだっていうのは誰にでもわかるわ。

でも、被差別の人が自分たちを少数派です、マイノリティですって言っちゃうのってどうなのかしら。

だってそうでしょう?ノンケじゃない人は社会の中で相対的に数が少ないから差別されている。って事は自分たちが「マイノリティ」と名乗る事で自分たちが差別の対象だって認めちゃってるって事になるでしょ?これおかしいじゃない。

セクシャルマイノリティと言われている人たちの戦いは、数の少なさ(マイノリティであるが為に受けている)が故の差別から解放される為に戦っている筈なのに、自らを被差別対象であるマイノリティの樽の中に閉じこめているという矛盾があるとアタシは思うわ。

「マイノリティ」と名乗ることは、自分たちが差別の対象だと認めることとイコールではありません。なぜならマイノリティという言葉には「差別の対象」という意味は全くないからです。参考までに英英辞書における「マイノリティ」の定義を二つほどあげておきます。
1 the smaller part of a group; less than half of the people or things in a large group.
2 a smaller group within a community or country that is different because of race, religion, language, etc
(Oxford Advanced Learner's Dictionaryより)

1 a)a group of people of a different race or religion than most people in a country
b)someone in one of these groups
2 a small part of a larger group of people or things
Longman Advanced American Dictionaryより)

少数派が少数派を名乗るのは、ヤマダタロウさんがヤマダタロウと名乗るのと同じぐらい当然のことです。そこに「ヤマダタロウなんて名乗るのはやめなさい。『ぼくはいじめの対象』と言っているのと同じだから」と介入するのは、間違っているばかりでなく、危険なことでもあります。それは「ヤマダタロウはいじめの対象である」という概念を共有させようという試みだからです。
今回の「黒ひゲイ」の件で、マイノリティという語自体に不快感を示す人が多く見られたのは「『マイノリティ』とは『差別される人』という意味だ」という変な日本的解釈がまかり通ってるってことなのか、それとも日本人の中に「少数派は差別されるのが当たり前」という社会通念が根強くあるということなのか、どっちなんでしょうね。どっちだとしても気持ち悪いけどね。
ていうかさー、ゲイとかレヅとかに向かってヘテロが「お前らマイノリティって名乗るな」って言うのって、アメリカの白人が移民の少人数エスニック・グループに向かって「お前らマイノリティって名乗るな」って言ってるのと同じで、すげー変よ。いや、たいていのアメリカ白人は英語を喋れる*1から、そもそもそういう頓珍漢なことは言わんと思うけどさ。

*1:もちろん厳密に言えば全員が喋れるわけではないけどね。