問題は疑問文と修辞疑問文のとりちがえだと思うの。

上記リンク先についてですけど。これ、上司は(無自覚的に、だろうけど)修辞疑問文のつもりで言ってるんじゃないですかね。「俺」さんはそれを純粋に疑問文と受け取って答えを返そうとしていて、そのために行き違いが生じているのでは。

ここで「修辞疑問文とはなんぞや」と思った方は以下をどうぞ。

表にまとめると、こういうことだったと思うんです。

上司の修辞疑問文 上司の真意
なんでこんなミスをした? こんなミスをするな
なんでうっかりしてたんだ? うっかりするな
もっとうまくやれるようにできんかったのか もっとうまくやれ
確認作業したんか? 確認作業しろ
なんでそれ(引用者注:メモ張に書いた手順のこと)を見ないんだ メモ張に書いた手順を見ろ

つまり上司の中では、この会話ではあくまで俺さんに対して「こんなミスはするな」と注意し、「確認作業をしろ、メモ張に書いた手順を見ろ」と指示しているつもりだったんじゃないかと思うんですよ。早い話が、単に言い回しの都合で疑問文形式にしただけで、問いへの答えそのものを期待していたわけではないんじゃないかなあ。だから「なんで」に対する「なぜなら」をいくら説明されても落ち着かず、いつまでも「なんで、なんで」と(よせばいいのにまた修辞疑問を使って)繰り返すことになったのでは。

この上司のように何をどう答えようと疑問文で食い下がってくる人に対しては、相手が修辞疑問文大好きっ子である可能性を考えて「なぜなら」以外で答えてみるのが得策だと思います。"Why"で聞かれたからって、全部"Because"で返さなきゃならない義理はないんですよ。早い話が、「なんでこんなミスをした?(真意:『こんなミスをするな』)」に対しては「申し訳ありません」、「確認作業したんか?(真意:『確認作業しろ』)」に対しては「今後はこのような方法で確認します」などのように返せば、向こうもそれ以上なぜなぜ攻撃は続けにくくなるんじゃないでしょうか。

ほら、昔学校によくいたじゃないですか、「なんで遅刻したんだ?」と高圧的に訊いてきて、「〇〇だからです」と答えると「言い訳するな!!」と逆ギレする教師。あれも理屈は同じで、本人は質問してるつもりはないんですね。つまり、こういうこと。

教師の修辞疑問文 教師の真意
なんで遅刻したんだ? 遅刻するな

要するに教師側の感覚では、「遅刻するなと叱ったはずなのに『〇〇だから』と理由をつけて言い訳した。ゆるさん」となっちゃうわけですね。げにやっかいなり、修辞疑問文。しかしこれも日本語の大切な表現技法のひとつなので(この教師のような使い方は問題だと思いますが、これは教師が馬鹿なだけで修辞疑問文自体には非はないはず)、日本語話者としては慣れるしかないと思います。「自分が発話者であるときは、疑問文と誤解されそうな局面では修辞疑問文を使わない」「自分が聞き手のときは、相手が本当に質問しているのか、それとも自分の主張を強めるために疑問文の形にしているだけなのかに注意する」ということが肝要なのでは。