『ファイアスターター』(スティーヴン・キング)読了

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Stephen King

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本日読了。思ったより時間がかかったのは、kindle版だと誤植が異様に多く、理解に首をひねる場面が多かったからかもしれません。単語の最初の1文字が抜けていたり("them"が"hem"になるなど)、2文字がくっついて別の文字になっていたり("clean"が"dean"になるなど)、1文字が別のアルファベットにすりかわっていたり("car"が"can"になるなど)、パンクチュエーションが間違っていたり(コンマがあるべきところになく、不要なところにあるなど)、単語と単語の間にスペースがなかったりとさんざんな状態で、今見たらAmazon.comのカスタマーズレビューでもずいぶん批判されてました。頭の中でいちいち「えーと、これはたぶんこの単語」などと修正しながら読むのが面倒くさい人は、紙の本で読んだ方がいいかも。

内容自体は大昔に初めて読んだ時とほぼ変わらぬ面白さでした。前半の白眉がコンマ型の血のしみの場面だとしたら、後半でもっともコワイのはピンチョットとキャップの身にふりかかることだと思います。物語の主要モチーフたる念力発火もそりゃド迫力ですが、それよりもこの手の「日常の中にひそむ恐怖を虫眼鏡でとことん拡大してみました」的部分の方が脳髄までじわじわ染みてくる恐ろしさがあると思うんですよ。一般的に『ファイアスターター』といえばパイロキネシスパイロキネシスと言えば『ファイアスターター』みたいな紹介をされることが多くて、それは必ずしも間違ってはいないんだけれども、この作品のいちばんおいしい部分はそこじゃないんじゃないかと思いました。

読んでいてちょっとひっかかった部分は、(1)レインバードがチャーリーに執着する理由がピンとこない、(2)コンピュータが万能すぎるわりにセキュリティが甘すぎる、の2点ぐらいでしょうか。(1)は日本語で読んだときには特に感じなかったので、単にあたしの英語力の問題かもしれません。しかし(2)はなあ。現在の自分の感覚で読むと、どうしても下記リンク先を思い出さずにはいられません。

ただし、"Shop"内の描写を読めばわかりますが、これってまだコンピュータに「パンチカード」が必要だった時代(初版発行が1981年)のお話ですからね。ここはひとつ、「コンピュータ=何でもわかる夢の万能機械」というレトロな感覚をいっそ楽しむぐらいのつもりで読んでおくのが正解なのかもしれません。レトロと言えば、アンディが飲むジンジャーエールがまだリングタブだったり、組織のエージェントが携帯でもスマホでもなくウォーキートーキーで話していたり、そもそも街に公衆電話がまだたくさんあったり、タバコを吸うキャラがやたらと多いあたりなんかもそうですね。「たかが30年強で、文化風俗ってずいぶん変わるものだなあ」と感心しました。そんなところも非常に興味深かったですね。