「自分でとりに行ってみなはれ。こんな値段でとれまへんで」

「iPhone 5」本体コストは167.50ドル―UBM「アップルの棚ぼた商品」 - IBTimes:世界の最新ビジネスニュースを読んで、目が点になりました。


アップルの最新スマートフォンiPhone 5」の本体部品コストは、わずか167.50ドル(約1万3千円)ほどだという。UBM TechInsightsのエンジニアが報告した。
アップルは主な携帯キャリアから、「iPhone 5」1台当たり約450ドルを受け取る。米国の主要キャリアでは2年契約で「iPhone 5」1台の価格は199ドルから399ドル、日本では実質ゼロ負担から2万640円で消費者に販売される。
UBSのアナリスト、スティーブン・ミルノビッチ(Steven Milunovich)氏によると、今年末までにおよそ4200万台の「iPhone 5」が販売される見込みだという。
UBM TechInsightsは、アップルが「iPhone 5」の売上で棚ぼた式に大金を得るだろうと述べている。

いやいやいや、「棚ぼた」じゃないでしょ。中島らもさんとの対談で上岡龍太郎さんが以下のようにおっしゃっていたのを思い出しました(以下、『何がおかしい [笑いの評論とコント・対談集]』(中島らも、白夜書房)p. 181. より。強調は引用者によります)。


素人の発想はスゴイなと、ときどき思いますね。年末に数の子を買いに言った奥さんが、「おっちゃん、何でこんなに高いの」って言うたら、おっちゃんが「自分でとりに行ってみなはれ。こんな値段でとれまへんで」って言うたとかね。

数の子のみならず、何にでも言えることだと思うんですよ、これ。

ちなみに自力で精密器機を設計・製作するとどれぐらい費用がかかるかについては、油井昌由樹さんの『アウトドアショップ風まかせ』(晶文社)に面白いエピソードが載ってました。かつてオイルライター製作会社をつくろうとした油井さんが、バンビ時計バンドの御曹司に頼んで費用を試算してもらったところ、こんなことになったのだそうです(pp. 59 - 60.)


僕らも、もとはと言えば素人、まさかオイルライターごとき単純きわまりない物品に、数十コの部品製作が必要で、肝心のアウターシェルを作るには金型(これが高いの!)が最低でもなんと十コはいる、などということを、この時はじめて知るのでありました。さらに、原材料の購入代金も含めて700万円(1971年当時のお金です)以上もかかるらしいということも知ってしまうのです。

今より約40年前に、単なるオイルライターを作ろうとしてさえ、これです。2012年の今、自力で金型から何から手配してスマートフォンを作ったらもっと気が遠くなるような金額がかかるであろうことは、想像に難くありません。そこにさらにソフトウェア開発費や広告費や人件費等が乗っかるわけですから、まさしく「自力で作ってみなはれ。こんな値段じゃ作れまへんで」状態のはず。1台あたりの部品コストにばかり注目して「棚ぼた」と評するのは、なんか違うでしょやっぱり。