米「Half in Ten」がLGBTファミリーの貧困問題を報告


アメリカ進歩センター(Center for American Progress)などが行っている、10年間で貧困を半分に減らす「Half in Ten」キャンペーンが、LGBTファミリーやその子どもは異性愛者の対照群より貧困率が高いと報じているそうです。この報告によると、特にレズビアントランスジェンダーにその傾向が強いとのこと。

詳細は以下。

「Half in Ten」の発表した"Restoring Shared Prosperity: Strategies to Cut Poverty and Expand Economic Growth."(『繁栄の分配を立て直す:貧困を絶ち経済成長を拡大させるための戦略』)によると、「レズビアンカップルの貧困率異性愛カップルや男性同士のカップルよりもはるかに高い傾向がある」のだそうです。「(年配の)レズビアンカップルは……異性の既婚カップルの2倍、貧困生活に陥りやすい」とのこと。

さらに、カリフォルニア大学ウィリアムズ・インスティテュートの集めた数字によれば、トランスジェンダーの64パーセントは年収が25000ドル未満なのだそうです。また、同性同士のカップルの子どもが貧困に陥る率は、異性愛者の既婚カップルの子どもの2倍だとのこと。

おそらく、レズビアンカップルが貧困に陥りやすいのは、女性差別同性カップルに対する税の不平等との二重苦を背負わされているからでしょうね。ただでさえ低い女の賃金で、税金はヘテロカップル以上に取られるんですから。……と思ったら、やはり元記事にこんな記述がありました。


Half in TenのMelissa Boteach局長は、この不均衡を解決するひとつの方法は平等な結婚制度だと述べている。「既婚のヘテロセクシュアルカップルなら、年収45000ドルで所得税共同申告を行えば、連邦政府から50ドルの還付金を受けることができます」とBoteachは言う。「同性カップルだと別々に所得税申告をしなければならず、2165ドルの税金を取られます」
One of the solutions to this disparity is marriage equality, says Melissa Boteach, manager of Half in Ten. "A married heterosexual couple with $45,000 in income filing their taxes jointly would get a $50 refund from the federal government," Boteach says. "A same-sex couple has to file separately and they would owe $2,165 in taxes."

なおBoteachさんによると、米国では女性の収入は、男性の収入1ドルに対し78セントしかないのだそうです*1

トランスジェンダーの貧困については、うちの過去記事「あらゆるところでトランスジェンダーへの差別と嘲笑が起こっている」、米調査 - みやきち日記が参考になるかもしれません。家庭、教育、雇用、医療など、あらゆるところに存在する差別が収入を押し下げているのだと思います。

日本ではLGBT関係の話題というと性愛と生殖のことにばっかり興味が集中してしまう人が多いようで(『純愛』がどうのとか『少子化』がどうのとか、根拠レスな妄想だけで騒いで終わりな人が多すぎる)、もっと現実的かつ切実なおカネの話が議論できるようになるのはいつなんだろうと思います。貧困問題についても、日本じゃシスヘテロ男性の貧困が目立ち始めてから初めて騒がれるぐらいですものね。Half in Tenの報告を見ると「ああやっぱりマイノリティは貧乏なのね」と悲しくなりますが、それでもこうした調査・研究がまじめに行われているだけ、日本よりはましな部分も多いんじゃないかとあたしは思いますね。

*1:日本だともっとひどいですよね、これ。参考:http://www.joseishugyo.go.jp/jouhou/hourei_pdf/45_2009.pdf